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変愛小説集 (講談社文庫)

変愛小説集 (講談社文庫)

変愛小説集 (講談社文庫)

作家
岸本佐知子
出版社
講談社
発売日
2014-10-15
ISBN
9784062779074
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「変愛小説集 (講談社文庫)」のおすすめレビュー

小泉今日子「生きることは恥ずかしいことなのだ」――10年間に読んで書いた97冊の書評集

『小泉今日子書評集』(小泉今日子/中央公論新社)

 茶化すつもりで読み始めた書評集に、完全に吸い込まれてしまった。著者は小泉今日子。タイトルは『小泉今日子書評集』(中央公論新社)である。彼女のやることなすこと、なぜか「小泉今日子の」と付箋がつく。それがきっと、小泉今日子なのだ。

 2005年から2014年にかけて「読売新聞」書評欄で発表された書評をまとめた本書。「アラフォー」から「アラフィフ」を生きるを生きるキョンキョンの、アイドルでもなければ、女優でもない、ひとりの女性としての言葉が訥々と綴られている。

「読み返すとその時々の悩みや不安や関心を露呈してしまっているようで少し恥ずかしい。でも、生きることは恥ずかしいことなのだ。私は今日も元気に生きている」と彼女自身が冒頭で吐露するように、そのタイトル選びといい、内容といい、こうして連なった書評を一気読みすると、どこか彼女の10年日記を盗み読みしているようでもあって、それがまた親近感を覚える。

「人との距離は難しい。近しい人には言えないのに、遠い人には言えてしまうこともある」『人生ベストテン』(角田光代/…

2018/3/10

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変愛小説集 (講談社文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

依空

再読。”変”愛小説とタイトルにある通り、木に恋をしたり、バービー人形と真剣交際をしたりと、収録された11編はどれも変わった愛のお話。私達の常識からみれば、彼らの愛は確かに変なものにしか見えないけれど、相手を本気で愛おしいと思う気持ちがこれ以上ないくらいストレートに描かれているので、実はとても純粋な愛の形を描いているだけなのじゃないかと思えてきます。けれど、愛と狂気は紙一重。行き過ぎてしまえば、純粋だったはずの愛も異常行為になってしまうという危険性も表れていました。作家の想像力の豊かさを十分に味わえる1冊。

2017/02/07

HANA

木に片思いした人、バービー人形と付き合っている少年、母親だけが存在する島。「恋」愛ではなく「変」愛、極めて奇妙な愛の形を取り扱ったアンソロジー。その名に恥じずどれもこれも奇妙な味の小説を、たっぷりと味わう事が出来る。ただその中の愛はとってもピュア、何かを一思いに思い詰めると「変」になるのですね。気に入った話は愛する人との共同生活を描いた「丸飲み」バービー人形との恋愛「リアル・ドール」ハウツー物のパロディ「お母さん攻略法」等。現実に即した話で、誰と誰がくっついたとか別れたとかいう話には飽きたあなたにどうぞ。

2017/10/10

sin

変愛とあるが変ではない。男女を問わず愛の多様性をカタログにして見せられているようだ。木に恋した女は、そのパートナーに馴れ初めし頃の変わらぬ彼女を感じさせる“五月”。セレブはアルバイトの少年を体内に囲い、少年はところ構わず体液を垂れ流し欲望に蕩ける“まる呑み”。兄は妹のバービーと愛欲に耽り、ケンに欲望を移す“リアル・ドール”。帰らない父達を待つ娘達は、流れ着いた男に惹かれて身を任し、母達は男を始末する“母たちの島”その他、愛と云う上書き保存をする前の欲望の物語たちと云ったところか?

2019/05/05

さおり

岸本佐知子さんが好きなので、翻訳本は苦手だけどがんばってみました。確かに、どれもこれも変で、どれもこれも愛。おもしろいのもあったし、本当に意味がわからないのもあった。皮膚が足からだんだん宇宙服に変わり、やがて宇宙に飛び立ってしまう流行り病にかかった人の話「僕らが天王星に着くころ」や妹のバービー人形との真剣交際を描いた「リアルドール」、母親との恋愛を勧める「お母さん攻略法」などなど。日本作家編もあるらしいので、そのうち読んでみたい。

2019/02/17

絹恵

かたちのない愛に正しさなんて求めて、果たしてそれを本物と呼べるの?と謳うような短篇集。ここには守るための罪も優しい嘘も存在しないけれど、それでも痛みを伴うのは、声ひとつで世界を変えることが出来たとしてもどうしようもなく報われない思いがあるからなのだと思います。その儚さが紛れもなく、不変の愛を感じさせました。特に『五月』(Ali Smith)が好きです。

2015/07/19

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