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カントの「悪」論 (講談社学術文庫)

カントの「悪」論 (講談社学術文庫)

カントの「悪」論 (講談社学術文庫)

作家
中島義道
出版社
講談社
発売日
2018-09-12
ISBN
9784065131602
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カントの「悪」論 (講談社学術文庫) / 感想・レビュー

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テツ

他者に対する親切心や博愛の心。小さな善から大きな善まで。自らの生命を擲つ程の自己犠牲を伴う愛だとしてもそこに快楽を覚えるのなら道徳的に良い行いだとは言えない。そう。善行を重ねて「きもちいい」と感じてしまった瞬間に、足下に待ち構える悪へと通じる穴に落下してしまう。道徳的な行いとは、善なる行動とは、本来至難のワザであるという自覚をもつことの大切さ。自分が良かれと思い積み重ねる他者への善なる行為は自分の快楽へと繋がるただのオナニーだと知ることの大切さ。そしてその上で道徳的に良くあろうと生きることへの絶望。

2019/04/24

ラウリスタ~

飛ばし読み。カントはそもそも適法的行為しか眼中になく、その中で実際には道徳的に悪い行為をガンガン指摘していく。悪へと陥る傾向、自由を持った人間が、それでもなおそれに抵抗し、理性によって「すべきこと」(道徳的に善い)を認識し、それを実現しようと必死にもがく所にこそ、人間の尊厳はない。幸福追求や、生命を守るという動機で結果的に良いことをなしたとしても、それが自己愛に基づく幸福の原理によるものであれば、道徳的に善くない。社会的な善人を狙い撃ちにした奇妙で苛烈な道徳論。

2019/02/11

大泉宗一郎

前から興味のあったカントに挑戦。「道徳的善さ」を成す目的は、良いことをした満足感といった快楽(幸福の原理)を排し、理性が命じる正しさに従おうとする意志(誠実性の原理)と、悪事をなす自由がある前提が必要と唱えたカント。そのために、自分や家族が地獄に落ちようと理性に忠実たらんとする誠実さを要求する、およそ人類に到達不能な原理を言葉のみを以て定義することで普遍的道徳を確立しようとしたカントの試みには驚嘆する他なく、単なる解説書に逃げずカントの欠点も指摘しながらその思考を明確化した本書も非常に興味深く拝読できた。

2024/01/22

しゅう

カントの倫理学は厳しすぎる カントが言う悪とは、極悪な事をする人と言う意味でなく、幸福の原理を誠実性の原理より優先する事を悪とみなしている。その事を転倒と読んでいる。 いくら良い事をしても、それが条件つきなら不道徳となってしまう。 理性の命令だけを聞き、自由による因果性の作用を受け止めて、道徳的に良い行動をする。 本書でも話しているが、こんな事できる人はいないと思う。厳しすぎます。 しかしこれは人にとっては至難の業であり、直ぐにそれを転倒してしまう。

2021/09/26

原玉幸子

著者の本は、実践生活を面白可笑しく哲学的に語る、或いは関わるエッセイがいいのですが、本書は正統なカント倫理学の解説(選書間違い!)でした。大半は用語をこねくり回す悪しき古い哲学講義の風であっても、「誠実性の原理を第一に幸福を第二に、その一致を最高善と呼ぶ」との著名哲学者の根本思想を理解するのは、(実践生活では何の役にも立たなくても)それはそれで知的な知識収集としていいと思います。(◎2019年・春)

2020/04/03

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