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冥途あり (講談社文庫)

冥途あり (講談社文庫)

冥途あり (講談社文庫)

作家
長野まゆみ
出版社
講談社
発売日
2018-11-15
ISBN
9784065132135
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冥途あり (講談社文庫) / 感想・レビュー

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mii22.

初めて読んだ長野作品『箪笥のなか』を思い出す。昭和の懐かしい風景、自分の子供時代の記憶を掘り起こし水彩絵の具で色つけしていくようにだんだんとよみがえる鮮明な記憶。死後折々に父の来歴に想いを馳せる娘の姿に徐々に自分を重ねて心が動揺したまらなくなった。長野さんとは同年代、同じ時代を生きてきた私にとってこの二編のお話は自分のことのようにさえ思えてくる。震災や戦争の悲惨さ原爆の恐ろしさを背景ににおわせながらもどこか人の悲しみにも温かな眼差しを向け、生きることの素晴らしさをさりげなく伝えてくれている。

2020/05/10

rico

この人の文章好きだなあ。千住界隈の川筋の風景、水郷地帯を行き交う小舟。行ったこともないあの時代のあの場所の空気感が溢れてて、引き込まれる。描かれるのは父の死と葬儀や遺品をめぐるあれこれや、記憶、親戚の昔語りから見えてきた壮絶な人生。そして今。昭和初期・戦中・戦後と生きぬいた多くの市井の人がそうであるように、平凡な日常と地続きのところに、例えば死体の山の中を歩きまわった記憶が埋まってる。淡々とした語り口で、歴史に残らない多くの人生があることを思い至るが、密度の濃さでは平成は昭和にはかなわない気がする。

2018/12/04

エドワード

昭和五年に東京で生まれた父の死に際して、娘の心に去来するかつての日々。時は流れて21世紀、遠ざかる一方の昭和の東京が、長野さんの美しい文章によって蘇る。都電が走り、数多の川や橋があり、料亭があり、銭湯があった。人が亡くなることは、記憶が消えることだ。建物の記憶、店舗の記憶。私も50年前の京都の風景を覚えている。舗装のない道路、夜店、線路脇の遊び場。そう、ついこの間まで、町は喧騒とゴミと人々の夢に満ちていた。小綺麗だが個性の無い町ばかりになっていく日本。旅先で懐かしい風景に出くわすのが私の無上の楽しみだ。

2021/04/04

東京で生まれ育ったと、言葉少なに語った父のルーツから、祖父、叔父たち、伯母に母、兄と私…本当か創作かも曖昧な小さなエピソードや、失われてしまった昭和の情景を切り取り一つ一つの繋ぎ合わせながら、時を重ねて行く。それは違う!と、本当はどうだったんだ?と、改めて突き詰めることもなく、そんなものかと許容しやり過ごす。漫然と日々を暮らすとは、案外そんなものなのかもしれない。同じ語り手による表題作と『まるせい湯』の短編2本収録。

2019/03/01

miu

東京生まれ東京育ちの父は被爆していた。父の死と父を取り巻く親戚たち。ずっと古い8ミリフィルムを観ているよう。静かに淡々と語られる長野まゆみさんの父のお話。疎開先の広島で原爆にあったという。県外から来た人はこういう風に受け止めていたのか。ずっと広島に住み続けている人たちとはまた違った感情がそこにはあった。死は真実と空想の境目にあるのかもしれない。死者の本音は一生わからず、こちらはただただ残された者たちで、思い話し続ける。ずっとずっと境目を漂っている。

2019/01/05

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