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されど私の可愛い檸檬

されど私の可愛い檸檬

されど私の可愛い檸檬

作家
舞城王太郎
出版社
講談社
発売日
2018-11-28
ISBN
9784065135136
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「されど私の可愛い檸檬」のおすすめレビュー

あなたは、自分が選んだ相手を“運命の人”だと信じていますか? 舞城王太郎が描く「家族愛」の物語

『されど私の可愛い檸檬』(舞城王太郎/講談社)

 思春期のピュアな恋愛感情を描いた作品集『私はあなたの瞳の林檎』(舞城王太郎/講談社)に続き、『されど私の可愛い檸檬』(舞城王太郎/講談社)が刊行された。この2冊に共通するテーマは、大切な人への愛。前作『林檎』が“恋篇”だったのに対し、今作『檸檬』は、“家族篇”である。親戚、夫婦、姉妹…否応なく人生の長い時間を共有する“家族”は、それでも究極的には他人だ。だから、そこにはさまざまなすれ違いが生まれてしまう。

 あなたは、自分が付き合っている、もしくは結婚している相手を“運命の人”だと信じているだろうか。はじめの中編「トロフィーワイフ」は、ある出来事をきっかけに離婚の危機を迎えてしまう夫婦を、妻の妹の目線から描いた作品だ。夫の友樹は、ある学者の研究をヒントに、“愛の真実”に気がつく。私たちは、自分の選んだ、取り替えのきかないものを肯定的に捉える傾向がある。だからこそ、自分の選んだ相手を愛し、幸福な生活を送れるのではないか…。友樹は、そう考えることで、美人で気立ての良い妻・棚子からの愛情を確信した。だが、…

2019/2/26

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されど私の可愛い檸檬 / 感想・レビュー

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yoshida

舞城王太郎さんが家族について書いた短編集。どうしても初期作品の印象が強いので、驚きつつ読む。短編三編で構成。読み進めると確かに舞城の作品だなと思う。いつの間にか他者を支配する女。リアルな病気の描写と予想外の家族の様子。何かが欠けている青年。あり得ないと思いつつも、何処かであり得ると思わせる描写。突然の展開。どの作品も好きだが、特に「トロフィーワイフ」が心をえぐる。無意識か意識的かによらず他者を感化し支配する姉。姉を止める妹との心理戦。繰返し読みたくなる魅力がある。やはり舞城王太郎さんの世界観は唯一無二だ。

2019/04/07

ででんでん

ドカンと読み応えがあって、とても好き。どこがどういうふうに好きなのかはまとまらないけど好き。熱かったり冷たかったり棘が出てきたりする、とても熱量のある塊が本の中に押し込められているよう。作品を少ししか読んでないので、数少ない既読の「渕の王」を、すぐ思い浮かべてしまう。「トロフィーワイフ」からは、「渕の王」の最初の友人の家に居座る親子の話を連想した。家族や職場、身近な人間関係のなかでの支配・被支配。「ドナドナ不要論」~「この世にかなしみはたくさんある。」yuiも歌ってたな。🎵でも、やってく~るでしょ~

2018/12/22

あも

真実の愛はどこにある?そこに届くため、暴力や喪失を通過することをしばしば求められる。大切な人を大事にしたいのに上手にできない。大好きな人を抱きしめたいのに手はいつも2本しかない。そもそもそれ以外の方法だって、きちんと見つけなくちゃいけないのに。何度も何度も僕らは間違えてしまう。親子、兄弟、恋人、夫婦、友人。誰かと誰かが今日も愛し憎しみ合って繋がっていく。軽やかに語られるマイジョーとしか言いようのない物語の端々にさりげなく横たわる真実。苦しんで身悶えて、それでも僕らは愛することだけはやめられないということ、

2018/11/29

aquamarine

「林檎」とは全く違う大人の愛の物語。「トロフィーライフ」夫婦なんて元は他人。家族とはなんだ。愛情とはなんだ。今回も作品から舞城氏の吠える声が聞こえてくる。幸福とはそれを感じる人間が定義するものであって、決して他人にどうこう言われる筋合いのものではない。「ドナドナ不要論」これは本当にきつかった。膵臓癌を患った椋子が、夫、愛する娘、実父母とやり取りする様は、現実味がありすぎて泣きたくなった。不条理に癌を与えられ、それでも母で娘で妻でなければならない一人の女。夫視点で飄々と語られるがゆえに痛々しく心に沁みる。→

2018/12/05

katsubek

献本を頂戴した前作に続いての舞城本である。前作に比すると、より深まりを感じる。家族の物語というが、そこにとどまらず、人間と人間との関わりといったところまで読み取れる。もちろん、その真ん中にあるのは、家族のかたちなのではあるが。2作を通して舞城の思いを読もうとするが、まだまだ茫漠として、掴めない部分が大きい。機会を見て、もう少し探ってみたい作家である。

2019/01/31

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