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人外

人外

人外

作家
松浦寿輝
出版社
講談社
発売日
2019-03-07
ISBN
9784065147245
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人外 / 感想・レビュー

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keroppi

とても不思議な読書体験。人の記憶を持つ人外が生まれ、運河を彷徨う様は、何か哲学的ホラーかと思った。その後、図書館跡や病院跡や様々な場所を彷徨い、ヒトやニンゲンや機械と語らいながら、思索する人外は、存在や時間や宇宙に想いを馳せる哲学者のようでもある。死に至る間際に垣間見た夢のようなものかもしれない。

2019/06/05

ちょき

「名誉と恍惚」で感じたあの筆圧の記憶もまだ新しく、かなり期待したが、詩的で洗練された淀みのないセンテンス、のみが魅力であとはなんともフォローのしようがなかった。なるほど連載だったか。序盤で膨らませた話はどこにもたどりつかず、なんの帰着点も見出せないまま終わりを迎えてしまう。人外はおそらく女性として生まれ、母となり娘を失い、男に捨てられた。人外として生まれ何を果たすのか、人を襲うのか、復讐を果たすのか、世紀末を救うのか?。という期待感も後半になると薄れ、後は秀逸な文書表現の発見のみに身を委ねるという顛末。

2019/07/17

hide

カーテン越しに入ってくる光が色彩に染まった影を映ろう。この光景は過去の出来事か、それとも未来の出来事か。過去を思い出す事も未来を予見する事も同じ心の働き。存在も時間も意識も移ろう。それがわたしたち。時の雫が未来からつたい落ちて、過去へと流れ落ちて泉となる。言葉から意識が生まれ思考となり、やがて言葉が消える。螺旋に織りなす思考は記憶となり生命の泉となる。その傍にあるアラカシの枝の股からずるりと滲みだして生を得た人外。人外に何を投影するのか。欠けた記憶は寂しさなのか、優しさなのか。その答えもまた虚ろに移ろう。

2020/10/05

アラカシの枝の股からずるりと滲みだして生を得た人外は、荒廃した世界を彷徨う。死体を乗せた列車。熱狂のカジノ。誰もいない遊園地や水族館。そこで出会った人たちの虚ろな眼差しとやさしさのようなもの。目に映る世界なんてある日突然変わってしまうものなんだと、何年か前に認識したつもりでいたけれど、何を信じればいいのか、何と闘えばいいのか分からない日々は虚しくて、寂しくて。なにかを求めて生きる人外の旅路の過程は、現実の私の空虚な心をいつのまにか埋めてくれた。人外が旅を終える時、私の心はそっと浮上する。ああ、踊りたいな。

2020/06/01

水零

アラカシの枝の股から生まれ落ちた「わたしたち」は、ウエを知り、カゼを感じ、マエアシを認め、うまれたのだと意識した。人でも猫でもない四足動物は「かれ」に導かれ旅に出る。死体を乗せ走る列車。運命を賭した狂宴。夜に沈んだアクアリウム。わたしたちは通りすぎた様々な死をみつめ、自らの生を意識する。食らい、惑い、前へ進む。今の未来は今の過去で。のぼってはくだり、のぼってはくだる、ぐるぐるまわるいのちの螺旋。身体に残る記憶のカケラ。かつて女だった、母だった…。そう、きっとこの旅は、かつて羊水でみたわたしたちの夢の記憶。

2020/03/21

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