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掌篇歳時記 秋冬

掌篇歳時記 秋冬 / 感想・レビュー

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Ikutan

旧暦の二十四節気七十二候に合わせた掌篇歳時記。12人の作家さんたちが、自由に気の向くままに綴ったという印象だった。ノスタルジックな雰囲気の重松さんや柴崎さん。瞬間を切り取った描写が巧いなぁ。情景がしみじみ浮かんでくる。リズムのある文章で独特な雰囲気の川上さん。やっぱり好き。町田さんはラストの展開にちょっと驚いた。原発事故後の被災地の暮らしを描いたのは柳さん。澱のように辛くやるせない思いが残った。

2019/12/10

よこたん

“ひとつの物語が幕を閉じることは、もしかしたら新しい物語が芽吹くこととどこかでつながっているのかもしれません。冬の終わりが、春のはじまりでもあるように。” 季節のお題、書き手もなかなかに難しかったのではないだろうか。トップバッターの西村賢太で息苦しくて仕切り直しを3度、中盤の山下澄人でこれはきついなと挫折しかけた(笑) 相性の良い悪いは仕方ないかな。長野まゆみの「綿柎開」がとても好みだった。町田康はやはり町田康。柳美里の「朔風払葉」は心に乾いた風が吹いた。トリは目当ての堀江敏幸の「熊蟄穴」、やっぱり好き。

2020/02/09

しゃが

掌篇の秋冬バージョンで、一陽来復の今日にふさわしい一冊だった。一説には秋は稲穂の実りに田が明るむから(明き)とよび、冬は収穫を終えた田畑に次の生命の気が蓄えられ、殖え行く時期だから(殖ゆ)というらしい。季節の節目を表す二十四節気に触発された作品たちと久しぶりの作家たちだったが、印象的だったのは柳 美里さんの無情な3.11の被災者を描いた「朔風払葉」と堀江敏幸さんの不思議な山里話で眠る穴、禁断の穴を描いた「熊蟄穴」だった。

2019/12/22

Mishima

旧暦の意味深長さよ。季節をあらわす言葉が鮮やかで詩的なのに驚く。その時々の自然を映し出す言葉に古人の観る眼の豊かさを知るようだ。季節の移ろいを十二にくぎり、それぞれの作家が寄せた掌編。未知だった作家が三名。そのひとり、山下澄人。作風が、頗る好みだった。心情の説明がまるでない物語はどうしてこんなにも清々しいのか。子どもが主人公で、心象風景をそのまま文字にしたかのような、つまりその場を体験させた気にさせる、観劇に酷似した読書。死が描かれたり、自省的・懐古的な趣きの物語が多かったように感じた。書き手がカラフル。

2021/03/19

プル

なんとも文句と皮肉しか字面で拾えず、億劫さを感じた西村賢太さん、町田康さんと筒井康隆さん。最初にあるから、この先を読むのをやめてしまおうかと思った。普段読まない柴崎有香さん、藤野千代さん柳美里さんの安定な文体にホッとし、お目当の堀江敏幸さんで締められた。二十四節気七十二侯、暦通りに合わせた作品かは、その土地で、受け手や書き手の季節の捉え方や感じ方は変わるだろう。

2019/12/13

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