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大きな鳥にさらわれないよう (講談社文庫)

大きな鳥にさらわれないよう (講談社文庫)

大きな鳥にさらわれないよう (講談社文庫)

作家
川上弘美
出版社
講談社
発売日
2019-10-16
ISBN
9784065174463
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大きな鳥にさらわれないよう (講談社文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

タイトルが魅力的だ。どこか幻想的でありながら、すでに失われた、自分が子どもだった頃を思わせるような響きだ。14篇の掌編と短篇から構成され、それらが全体として一つの物語世界を構成するが、そこでは空間の境もあるかなきかのごとくに曖昧だし、時間もまた単線的に流れることがなくどこか望洋としており、遥かな幽けき世界を漂うかのごとくである。萩原朔太郎の『月に吠える』の「自然の背後に隠れている」を想起させるような魂のおののきと、震えに満ちた物語である。「形見」に始まるこの物語は、冒頭の一文から川上弘美の世界が展開する。

2020/04/10

ちなぽむ

今日は湯浴みにゆきましょう、と行子さんが言ったので、みんなでしたくをした。さらさらと流れる、平和でまっしろな世界。美しい、せかい。憎しみというものが分からないの、透明なほほ笑みを浮かべるあなたが美しくて羨ましくて憎らしいわたしは神に多くを望みすぎていた。神は消え去って運命は操作されている、それは絶望を指すものだろうか、それでも毎日パンを焼くのだから。平穏な絶望は幸福となにがちがうのだろう。ねえ、かみさま。「ねえ、誰かを愛したことが、あった?」進化するわたしたち。「ないわ」「いいえ、愛しかなかった」

2020/07/03

かみぶくろ

こーれはすごいぞ。けっこう、いや相当すごいぞ。人類の滅亡過程を、はじめは個々のミクロな人物たちから、次第にマクロなより高い視座から、柔らかく、生温く描く本作。神話が過去にありえた神=人間の原形質的な物語だとすれば、これは未来の変形した人間から現在の人間を照射する逆向きの神話。作者の壮大な想像力・創造力に感嘆するし、それでいて個々の「人間?」への繊細な眼差しを両立しているのもすごい。こういう未知の体感をもたらしてくれるのが、読書のなによりの醍醐味だと思う。

2019/11/24

naoっぴ

すごい物語だ。これまでもディストピアを描くSF小説はあれこれ読んできたように思うけれど川上弘美さんのこの雰囲気、設定、世界観は独特だ。滅びゆく人類の物語というのにどこか温かみがあり心地よい。ファンタジックでほわんとしていて、だけど根底にはピリリと鋭い視点があり、そこに触れたときはっとする。読むうちに人間とは一体なにかという問いがふわりと現れる。諍いがやめられず、異なるものを攻撃し、優しさと愛情に満ちた矛盾だらけの生き物。とてつもないスケールの力作だった。

2019/11/05

Kajitt22

読み始めると、レイ・ブラッドベリの初期の短編集のような、意表を突く意外性と共に妙な懐かしさを感じさせ、ぐっと物語に引き込まれた。ヤコブとイアンは『ベルリン天使の詩』の様でもあるし、各編の飛躍と繋がりには全く唸ってしまう。そして最後の2編で一冊の立派なハードSF長編になってしまった。「うそ話」川上弘美の新たな境地なのか。最新刊を読まねばと思う。

2019/11/22

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