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瓦礫の死角

瓦礫の死角

瓦礫の死角

作家
西村賢太
出版社
講談社
発売日
2019-12-11
ISBN
9784065178935
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瓦礫の死角 / 感想・レビュー

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八百

一作ごとに都合良く新たな主人公を設定できぬと本人が断言しているのだからこの時を行きつ戻りつの私小説をマンネリと腐すことは出来なくなってしまったようだ。冒頭二篇を飾るのはただ過ぎて行ったSWEET 17 BLUES、精一杯の虚勢を張るもほんとはすごくないボクのエスケープの物語。母親や職場の先輩から這う這うの程に至るまでもなく尻尾を巻く無様な逃亡はこれまでの破天荒でスタイリッシュなボクとは程遠くそのそこはかとなく漂う寄る辺なさにダメっぷりが加速する。没後弟子噺も冴え渡り北町貫多劇場セカンドステージ乞うご期待

2020/10/13

りつこ

貫多と久しぶりの再会。2019年に発表した作品のようだが、1,2話目は10代の頃の貫多。服役中の父親が出所してくることに怯え、母親にたかり、そして逃げ出す。劣等感と自惚れ、暴力性と小心さ。人間らしいといえば人間らしいが、お知り合いにはなりたくないタイプ。私小説だから作者自身に重ねて読んでしまうわけだが、独特のユーモアについ笑ってしまう。初期の頃の内から沸々と煮えたぎるような感じはなくなって、その分貫多の孤立感や寄る辺なさが際立つ。 4話目の「崩折れるにはまだ早い」には新鮮な驚きがあった。

2020/06/02

抹茶モナカ

コロナの影響で図書館から借りるのに時間がかかった。何と言うか、感傷的な書き振りに、普通の人の感じを受けた。何処か、笑いで支えられていたように西村作品について、イメージしていたが、父親の性犯罪について触れたせいか、普通の私小説になっていて、第3の新人の辺りと似ていて、確かに上手に書けてるけど、氏の言葉で言うと、あきたりない。突き抜けていない感じ。或いは、小説形式の本を僕が読んだのが久しぶりだったせいかもしれない。

2020/04/17

carl

暗い私小説の短編集。 10代の暗くて卑屈で屈折した主人公から突然中年の小説家の 話になって少し戸惑った。出来ることなら続いている話が読 みたかった。難しい漢字と最近聞かない言い回しがたっぷり。難しくチョット退屈な昔の小説を読んでいるような感じだった(饐えた匂いがしてくる)。 只々暗くてパッとしない話だったが惹かれた。もっと深く読めれば良かった(読む力が必要と感じさせられた)

2020/05/20

つちのこ

『蠕動で渉れ、汚泥の川を』の続編にあたる表題作は、勤めていたレストランを追い出された後の、堕落した日々を描いている。後年に亘って支配続ける救いようがない自己中で懐疑的人格が、17歳にしてパワーを増しているのが垣間見える。そんな生活の中でも文学へ惹かれていく過程が不思議この上ない。私小説家としての著者を形成する早熟なエピソードである。収穫は同時収録された『崩折れるにはまだ早い』。師と仰ぐ藤澤清造の晩年を描くが、最後まで読んでそれが分かった秀作。こうした作風にチャレンジしたことが、ファンとして嬉しい。

2022/07/20

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