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ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前 (講談社文芸文庫)

ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前 (講談社文芸文庫)

ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前 (講談社文芸文庫)

作家
多和田葉子
出版社
講談社
発売日
2020-08-11
ISBN
9784065195130
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ヒナギクのお茶の場合/海に落とした名前 (講談社文芸文庫) / 感想・レビュー

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コットン

取っつきにくい不思議な味の短編集。『ヒナギクのお茶の場合は』はほんのりサスペンス風でゆったり帰着するのが良い。 『海に落とした名前』は名前を忘れた女性の空っぽな忘れた感が半端ない。 他に三択設問が随所にある『U.S.+S.R. 極東欧のサウナ』など。

2023/06/01

サンタマリア

『U.R + S.R 極東欧のサウナ』は文中に選択肢が出てくる変わった小説。一つ一つの選択肢を当てはめて、何をもたらすかを想像して遊んだ。 3人の男性関係を書いた『時差』では時間や場所のズレよりも、精神的なズレに面白さを感じた。 『海に落とした名前』ではシャミッソーの『影をなくした男』を連想した。小説の舞台は閉じ込められた場所として一貫しているが、主人公の状況が目まぐるしく変わる。最後にはレシートの中を言葉で旅する。これも精神的?

2023/09/18

田中峰和

真面目に話を追っていてはついていけない。「枕木」で駅だと思ったら海に来ていたと、非現実的な夢の世界へいざなわれる。男の車掌が海に飛び込み、制服を脱ぎだす女の車掌の乳房に触れるわたし。話は繋がっておらず、無賃乗車の女の切符を買ってやるわたし。次々と脈絡もなく展開するが、何のことやらさっぱりわからない。「雲を拾う女」では、トイレの個室を出た私は、哺乳ビンの乳首に変身してしまう。カフカへのオマージュなのか、不条理というより笑いを誘う。言葉を思いがけない変貌で変身させる。言葉の遊びなのか、読者は幻惑される。

2021/03/11

圓子

輝くばかりのチョコレートボックスからひとつを選び取るような、滾々と湧き出る不思議な泉のような。そのようなことばの配置と流れを堪能したくて手に取るのが多和田作品だ。この1冊で、いままでは、言葉だけに注目しすぎていたかもしれないと感じた。この作家はずっと、姿形に限らず嗜好や思考、場所も時間も含んだ変身・変容・メタモルフォーゼ・トランスフォーム……そういうものを書いているのではないか。変化することでかえって暴露されてしまう「わたし」を書いているのではないか。

2020/12/10

ハルト

読了:◎ 言葉で心にさざ波を立てるような。大波になるような予兆を含ませながらも、けしてそうはならない。ただ心に潜在的な不安さを置いてくる。そして解説にあるように、「名づけえぬ欲望」を描き、同一性を揺るがす、クィアな文学でもある。文体を、内容を噛み砕きながら、この著書にしか書けない世界を味わう。するとそこに著者の深い独自性が見えてくる。そして結局は波にさらわれるのだ。印象深かったのは、「枕木」「ヒナギクのお茶の場合」「所有者のバスワード」「海に落とした名前」でした。

2020/10/15

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