日輪の遺産 新装版 (講談社文庫)
日輪の遺産 新装版 (講談社文庫) / 感想・レビュー
雲母
戦争末期の頃とバブル崩壊後の時代を行き来する様に紡がれる。序章で13歳の少女達が明るく作業に従事し、平和を説く担任が生徒等を温かく見守っている。時代は現代に変わり競馬場で崖っぷちの男は老人と出会う。老人は突然倒れ亡くなるがその前に古い革の手帳を渡す。そこには戦争終結時の生々しい記録が遺され、マッカーサーから奪った財宝を隠す密命が書かれてあった。財宝を探す宝探しの話かと思っていると全く予期せぬ方向に向かう。少女達の行方。財宝隠しに携わった人達のその後。責任の重味。戦争の爪痕。心にずっしりのしかかって来た。
2021/11/26
Kei.ma
目映いほどの日輪への誓い。終戦間近に五人の将軍から極秘命令を受けた若い将校が、生涯をかけて忠誠を尽くすというもの。一体にこの国の人が持つ使命感とはどれほど強固なのか。防空壕の少女も、一兵の軍曹も。この物語は、終戦直前に隠匿された現在価値200兆円の謎を追うというもの。ちゃらけているようでも、膨らむ日の国を守るという尊い意識。突然現れた予想外の場面が嬉しい。それは、マッカーサーにサシで挑む小泉元中尉の台詞。アツい、これぞニッポンジン。それぞれの身体に流れる遺伝子がかの国難から救ったのだ・・・。
2021/11/14
ラスカル No.1
やはり浅田次郎さんの作品には感動する。作品の構成が素晴らしい。手記と終戦後の緊迫感を伴う財宝の隠匿、またその謎に迫る今。過去と現在に登場する人々、それぞれの繋がりが見事に表現されている。亡くなった少女たちを前に立ち尽くす人々、誰も間違った選択はしていないように感じた。
2022/02/11
せんにん
1945年、終戦直前の日本。マッカーサーから奪い取った金塊。その額、200兆円。敗戦後のためにそれは隠されることに……。そこから47年後の今。とある老人の昔語りから歯車は動き出す。浅田文学の初期作にして真骨頂。後書きで稚拙と称しているが、そんなことはそんな事はない。財宝を追うミステリ仕立てでもあり、戦争小説でもあり、そして人情味も有る。ラストまで蒔かれた種が、あくまでも新しい未来へと芽吹く展開は何物にも代えがたい。
2022/09/17
すいそ・はいどろ
なんとなく読んだ気がするなあと思いながら読了。新装丁版にありがちなことなのですが、最後まで、読んだかどうか判然としないのは完全にボケているのかもしれません。中身はプリズンホテルと蒼穹の昴の両方の要素が入った浅田次郎スペシャルです。とても良いのですが、最後の締め方が少し納得がいかないような。何より自分のボケ具合の方に呆れてしまい、もやもやしたまま。
2021/10/31
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