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瓦礫の死角 (講談社文庫)

瓦礫の死角 (講談社文庫)

瓦礫の死角 (講談社文庫)

作家
西村賢太
出版社
講談社
発売日
2022-05-13
ISBN
9784065280362
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瓦礫の死角 (講談社文庫) / 感想・レビュー

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桜もち 太郎

作者が生きている頃は怖いもの見たさに読んでいた。しかし2022年に亡くなってから読むと一味も二味も違う感覚を覚えた。相変わらずのダメ男が主人公の私小説、けして愛すべき男とは思えないところが良い。彼の人生は藤澤清造の「何のその、どうで死ぬ身の一踊り」この一句に全てが治まっているような気がする。彼は死に花を咲かせるような作品を残せたのだろうか。「今生きている者は洩れなく全員、全くの無になる」、彼の生死感に同意する。本作は2019年の作品。

2023/05/24

JKD

傲慢極まりない貫多の若き時代の堕落しきった生活。時には少し真面目に働いてみたり、邪な気持ちで女性を意識してみたり。絵に描いたような偏屈さとその後の私小説家としての人生観が興味を引いた。藤澤淸造の歿後弟子を名乗るべく四冊目の根津権現裏入手に奔走する姿も印象的。根津権現裏は一度読んでおくべきなのかも知れない。

2022/06/05

澤水月

「瓦解した性犯罪加害者家族」に不穏の影、父の出所に怯える母。「いつものクズ」だけでない子供と庇護者の立場を揺れる貫多の姿描く表題作。「崩折れるにはまだ早い」は細かな仕掛け効いており、驚かされた。古本屋新川とのやりとり描く「四冊目の『根津権現裏』」は古書痴の極み描く、中に結句著者の絶筆となった作品名出て切ない。いつもながらタイトル付けがいいなあ。瓦礫の死角からどんな経緯で「感傷凌轢」(『形影相弔・歪んだ忌日』収載)の驚愕すべき状況に繋がるのだろうか…

2023/02/07

人生こんなに楽しくて委員会 会長

ときどき北町貫多に会いたくなる。生前でさえそうだったのに、著者が急逝してからは、そう想うペースが早い。一時は本が買えなかった。それだけファンが多かったのだろう。今回は若き日の貫多に会うことができた。まだ17歳。暴力的で根は至って小心の固まりにできてる彼。確かな筆致で私小説(わたくししょうせつ)の世界へ読者を誘って離さない。“よござんす”と返事する彼が堪らなくおかしい。自分も日常で使いたくなる。周りは爆笑だよ。…もう新しい貫多には出会えないのかと思うと、本当に彼(西村賢太)は死んだのだと実感する。寂しい。

2022/08/09

村山トカレフ

再読。4周目。此度は文庫で読む。この作が文庫に入ったのも「疒の歌」同様、先生の「死」が嚆矢の、主人公消えしの虚しき二階級特進なのである。表題作を含む4編が収録されているが、ラストの「崩折れるにはまだ早い」(初手のタイトル「乃東枯(なつかれくさかるる)」からの改題作)が出色のできばえだ。貫多、否、賢太の覚悟と思慕と執念が筆に宿り、藤澤淸造が時を超え生々しくも必然と這い出る態。噛みしめるやう、咀嚼するやうに読んだ。── 読了後、本書を矯めつ眇めつひねくり眺め、帯の追悼の文字にそっと親指をあてて隠してみる。

2022/07/29

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