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私のことだま漂流記

私のことだま漂流記

私のことだま漂流記

作家
山田詠美
出版社
講談社
発売日
2022-11-24
ISBN
9784065295915
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「私のことだま漂流記」のおすすめレビュー

山田詠美に「あんた、字、書けたんだね」小説家デビュー時に言われた言葉。約38年間第一線で活躍し続ける秘密

『私のことだま漂流記』(山田詠美/講談社)

 デビューして約38年経つ山田詠美の小説家としての人生は、ほぼ私の年齢と同じである。

 こんなにも長いあいだ、第一線で活躍し続ける小説家はまれだろう。

 人生は変化の連続だ。SNSの普及により、誹謗中傷が多発するなんて20年前は誰が思っただろうか。しかし、そんな世の中でも変わらず喜びを与えてくれるものは存在している。

 私にとっては、山田詠美の小説やエッセイに触れられることがそうだ。今も彼女が大人気作家として活躍しているのは、魅力的な小説を生み出し続けてきた結果だろう。

 彼女は自伝『私のことだま漂流記』(山田詠美/講談社)で、今までエッセイで明かさなかったこと、明かしていても詳しくは書かなかったことを書いている。たとえば山田が原稿用紙に手書きで小説やエッセイを書いていることは知っていたが、それが今も続いているとは知らなかった。

 そして本書の半分近くを占めるのが、彼女が文藝賞を受賞する前までの出来事である。

 山田詠美の小説からは彼女しか書けない文体と、そこから醸し出される独特の香りがある。

 そのふたつを視覚で感…

2023/8/7

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「女流作家」は差別用語ではない!? デビュー後に“黒人との恋愛”をバッシングされた山田詠美の過去、そして現在

『私のことだま漂流記』(山田詠美/講談社)

「女流作家」と聞いて、あなたは時代遅れの言葉だと思うだろうか。

 直木賞作家で、現在は芥川賞の審査委員を務め、デビューから約38年、年下の女性たちにも大きな影響を与えた山田詠美の自伝『私のことだま漂流記』(山田詠美/講談社)が刊行された。

 そこで山田は、今、「女流」は差別用語のように言われるが、決してそうではないと語る。この事実を、驚きをもって受け止めた人々も多かったのではないだろうか。

「なぜ山田詠美がそんなことを」と思う前に、彼女が文藝賞を受賞した小説『ベッドタイム・アイズ』でデビュー後、女性の作家である自らをどれだけ否定され、同じ女性からも冷たい眼差しで見られていたのかを知る必要がある。

 私が、山田詠美がデビューした1985年のことを知らないのは大きい。先入観なく、彼女の小説の愛読者になれたのだから。

 中学校で不登校になった私は、よく図書館や本屋に行って、たくさんの小説やエッセイに触れた。その中でも山田詠美の小説を読むと心地よさを感じて、不登校時代のつらさが和らいだ。

 しかし私が山田詠美の小説を読んでい…

2023/8/2

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私のことだま漂流記 / 感想・レビュー

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starbro

山田 詠美は、新作中心に読んでいる作家です。本書は、本格自伝小説という触れ込みですが、自伝小説というよりも、自伝的エッセイでした。著者はイメージよりも真っ当な人生を歩んでいます。しかし宇野千代を師として仰いでいるとは思いませんでした。 https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000004583.000001719.html

2022/12/10

R

自伝というには、軽くて読みやすすぎて、エッセーなのだけども語られる内容に時代を感じて、文壇という怪しからんものの香りを嗅げるものでとても面白かった。デビュー時はすごく大変だったろうことがわかるのだけど、怨念めいた恨み節ではなく、そういうこともあったと、もはや昇華してしまっている強さが読めて楽しい。小話のように、でてくる挿話は歴史の生き字引的な風もあって、文壇のある時代を生きた人なんだと、その語りを聞けるようですごくよかった。

2023/05/15

ネギっ子gen

発表舞台が、リスペクトする宇野千代先生の『生きていく私』と同じ毎日新聞紙面。エッセイと見紛う“「根も葉もある嘘八百」のような自伝めいた小説”。著者は、生まれて初めて書いた小説でデビュー。<20代半ばだった。今現在とは全然異なるポイントにおいて厳密だった私。色々と許せないことが多かった。では、今、60を過ぎてどうかと言えばずい分と柔らかくなったのである。いい加減さをマスターしたのか、世に言われる「こだわり」というものが格好悪く思えて来た>。著者あまり読んでない。以後心して読みたし。えっへん! ははははは。⇒

2023/05/13

ぼっちゃん

【2023年2月号 ダ・ヴィンチのプラチナ本】山田詠美さんの自伝小説とのことだったが自伝エッセイのようだった。子供時代お小遣い稼ぎのため、自分で書いた本を家族に売ろうとする話。芥川賞・直木賞候補時の誹謗中傷。宇野千代さんをはじめ多くの文壇の人たちとの関係など、なかなか興味を誘う話ばかりで面白かったです。【図書館本】

2023/01/08

ころこ

書評を読んで気になり、手に取ってみる。自伝的なエッセイで実はこうだったという風なテイスト。社会と闘っていた初期作品しか知らないが、その原点は親の仕事の都合による転校を繰り返したことによるイジメと、イジメに端を発した人間関係の洞察と余計な人間関係の諦めにあることが分かる。背景が分かるので、彼女の小説が読み易くはなる。読者も増えるかも知れない。しかし、それで失われる緊張感はある。大きな困難に襲われた時に直ぐに書くタイプと、後々まで自分の内にためておくタイプの作家がいるという。彼女は当然、後者だという。

2024/01/04

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