ここはとても速い川 (講談社文庫)
ここはとても速い川 (講談社文庫) / 感想・レビュー
クプクプ
井戸川射子さんの本は初めて読みました。「ここはとても速い川」は読者を子供時代に戻す不思議な作品でした。登場人物の子供たちがロッテリアのメニューで、どれが一番おいしくて得か語り合うシーンがありましたが、そういえば自分も子供の頃、ファーストフードで注文を選ぶときにワクワクしていたな、と思い出しました。また井戸川射子さんは子供が好奇心を持つ、際どい性的なことも逃げずに書ききる作家だと認識しました。関西弁の文章もリズムがよく、温かく成功していました。この先も大いに期待できる実力派の作家が誕生しました。
2023/02/11
fwhd8325
なかなか図書館の予約が回ってこないうちに、文庫が発売されましたので購入しました。独特な文体は、井戸川さんが詩人だからなのかはわからないけれど、これはこれで引きつけてしまう力を感じました。表題作と小説デビュー作「膨張」の2編。合わせて150ページほどの作品ですが、作家の世界観を強く感じます。読む度に新鮮な気持ちになれそうな気がします。
2023/01/13
nico🐬波待ち中
全体的にやわらかな文章。けれど中身は濃くたまに鋭く突き刺してくる印象の一冊。児童養護施設で暮らす小学生・集の物語(表題作)と、特定の住所を持たず生活拠点を点々としながら生活するアドレスホッパー・あいりの物語『膨張』。どちらも大人の都合で生活拠点を決められた子供たちが登場。普通の暮らしが何なのか。どんな生活ならいいのか。そんなことは其々の価値観だからどうでもいい。けれどそれに従うしかない子供たちの気持ちはどうなるのか。大人に振り回され、どこか諦めているような子供たちに感情が揺さぶられ、もやもやが止まらない。
2023/02/04
佐島楓
自分はまだ幼稚な部分があるから子どもの気持ちがわかると思っていたけれど、そうじゃないと気づかされた一冊。ほんものの子どもははるかに無力だ。傷つけられたときにどう抗えばいいのかがわからないのだもの。それと同時に、わたしも無意識にひとのことを傷つけているなと思い知った。登場する少年たちがこれから進む路の険しさを思うと、何も言えなくなってしまう。ほんとうに。
2022/12/22
おいしゃん
野間文芸新人賞作品。帯で作家の先生方から激賞されているように味わい深い作品なのだろうが、入り込めず残念。年間250冊読み活字慣れしているはずの自分でも、ぎっしり詰まった本文にまさかの文字酔い。直近で芥川賞も受賞されたが、この賞の受賞者はなぜ揃いに揃って、改行もせず、皆同じようなリズムで書かれるのだろうか…
2023/03/01
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