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働くことと生きること (集英社文庫)

働くことと生きること (集英社文庫)

働くことと生きること (集英社文庫)

作家
水上勉
出版社
集英社
発売日
2015-04-17
ISBN
9784087453119
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働くことと生きること (集英社文庫) / 感想・レビュー

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さおり

水上勉さんは、福井県出身の作家さん。40代で職業作家として食べていけるようになるまでに、自身が経験したいろんなお仕事のこととか、父親のこととか、取材した職人さんのこととか。働くとは何か。生きるとは何か。最後の方に「天職」について書いてたんだけど、そこはわかったようなわからんような。ずいぶん前に書かれた本なので、今は使ってはいけないことになってる言葉がばんばん出てきました。そういうあれこれも含め、おもしろい本でした。仕事を辞めるタイミングで読もうと思っていたので、あと10日ってところで達成できて良かった。

2022/03/20

shizuka

様々な仕事について、作者の経験やご両親、出会った人々から感じ得たこと、日本伝統工芸の職人の暮らし振りなどが細かく丁寧に書かれている。お父様の仕事、お母様の仕事、決して望んでやった仕事ではないだろうに、最終的には天職となった。そこまで行き着くまでの様々な思いを水上氏は現代と照らし合わせ、天職とは何かを示している。仕事にたいして、わたしは甘い気持ちで生きてきた。天職には出合ってないし、いまの仕事が天職になるかどうかもわからない。嫌な仕事だとしても真面目に心をこめて勤めるべしと。働くことは生きることなのだから。

2015/12/06

やどかり

作家として食べていけるまでにいくつもの職を転々とされた経験を記されている。棺づくり下駄直しに従事されたご両親のことにも触れられ、また職人たちを取材し、天職とは何かを考えている。「天職とは最初からあるものではなく、働きながら育った人格があとから見出すもの」。宮大工もしていたお父さんの言葉がよかった。山に生えている時にすでに、その木が竣工した家のある場所に納まっているけしきが見えるのだそうだ。木が山でものを言っている。工場で大量生産されるようになった今ではそんな感覚を持ち合わせた職人はいないのかもしれない。

2022/08/27

黒猫

町中のネオンがどこから来ているのか?そんなこと考える人はいないでしょう。今も地方の山には巨大な鉄塔があり電気が通っています。しかし、豪雪地帯には鉄塔が雪で埋まってしまい。結局それを防ぐ、雪かきをするのは人間です。「山奥の保線工」より。また、代用教員で裁縫を教えに分校に通う足の不自由な松見先生が、峠の地蔵の前で腰掛けたままこときれていた死の痛ましさ。ポケットには裁縫布が生徒4名分見つかった。松見先生の責任感に見習うことは多いです。天職等なく現場、今を生きることこそ全てという著者の言葉が私の心に響きます。

2016/01/01

T

「住めば都」という言葉、仕事でいえば「勤めれば天職」と言えるだろうか。この本は筆者の職業の暦をもって、そこで出会った仕事の不思議さ、理不尽さ、出会った人の生き様を克明に描いている。自分が一生関わらないであろう仕事の妙について知ることは興味深く、またそこから現れてくる職業観は美しい。終盤、なりわいと天職について語られる。死人を火葬することが天職と語る老爺の話、生活を切り詰め、自然と歩む老職人と利益の追求を第一義に森を伐り、大量生産で儲ける若手デザイナーの話は、仕事についての意識に鋭いものを突き付けてくる。

2016/02/17

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