愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない (集英社文庫)
愚者よ、お前がいなくなって淋しくてたまらない (集英社文庫) / 感想・レビュー
ケイ
「私にも見せてくださいよ、その跡形もない風景を」。そう言った男はもういない。競輪場を共にまわったあの男も。弟も。笑顔の美しいあの人も。すでにおらぬ人達が、思い出のある場所で、あるいは突然に、目の前に現れる。おとこは亡霊たちと時間を共にする。青空の下、ワンピースを来て、時々スキップをしながら歩いていた彼女。男達との別れを描きながらも、真ん中にあるのは失った元妻。「あんな男と結婚したから」 ...耳にしながら、救えなかった痛みが、悶え苦しんだ日々が、この男を小説家にした。大好きな人に微笑む彼女がみえてくる。
2019/05/24
むーちゃん
いささか自慢?と思えるところもあるが、やはりカッコいいなと。あのビートたけしも言うぐらいですから。 人は最後一人ですが やはり出会い、別れは楽しくて辛い。切ない。だけどそれを抱えて今日を生きていくしかないんだなと。
2019/03/13
ふじさん
最愛の妻の死を受け止められないまま酒とギャンブルに明け暮れる私。そんな時に、似た性格の競輪記者のエイジ、弟分的な存在の芸能プロ社長の三村、執拗に小説の執筆を進める編集者の木暮と出会う。生きるのが不器用な愚者たちとの出会いと別れが、小説を書き始め、文学賞を受賞するなど高い評価を受けることになる。愚者たちとの切ない絆を描く自伝的小説の最高傑作。まさに、本の題名が、作家の悲しい心情を表している。
2021/07/03
乱読亭AKIRA@晴釣雨読🎣
伊集院さんの自伝的小説。妻の死をキッカケにギャンブル、酒に明け暮れ、どうしようもない生活を送っていた主人公。その不器用な生き方しかできない主人公と自分の生き方に大きな影響を与えることとなる3人の男(愚者)たちとの交流を中心に描いた物語。男の切ない絆が描かれています。つらい別れを経験した時に読んでみると良いかもしれません。
2018/08/26
さとむ
この1年、読書量が激減したのは競輪にどっぷりとハマったから。敬愛する伊集院静が競輪好きと聞いたときは嬉しかったし、彼のコラム目的で週刊大衆を定期講読することに。それはそうとして、本作、競輪がモチーフとなっているものの、主題は弟と奥さんの死。喪失の悲しみとやるせなさが伝わる。伊集院さんの人としての大きさ、広さ、深さを思う。
2017/08/15
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