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バラカ 下 (集英社文庫)

バラカ 下 (集英社文庫)

バラカ 下 (集英社文庫)

作家
桐野夏生
出版社
集英社
発売日
2019-02-20
ISBN
9784087458398
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「バラカ 下 (集英社文庫)」のおすすめレビュー

「夫はいらない。でも子供が欲しい」――ドバイの赤ん坊市場を訪ねる日本人女性…原発事故後のありえたかもしれない世界

『バラカ』(桐野夏生/集英社)

 もし東日本大震災による原発事故がもっと大規模な被害をもたらしていたら……。

『バラカ』(桐野夏生/集英社)はそんな「あったかもしれない」世界で生き抜くことを余儀なくされた少女の、数奇な運命を描いた物語だ。

 日本の地方都市に移民してきた日系ブラジル人の若い夫婦パウロとロサに、初めての子が授かった。「ミカ」と名付けられたその子は幸せいっぱいの家庭ですくすくと育ち、と言いたいところだが、神は彼女にそんなイージーモードの運命を与えはしなかった。

 パウロは大学まで出ているにもかかわらず、単純労働しか働き口がない現状に嫌気がさし、酒に頼る毎日を送っている。一人で慣れぬ育児を背負わされたロサは、ストレスのはけ口を求めて「聖霊の声」教会というプロテスタント系の新進教会に入れ込むようになった。ロサが高額の献金をし始めたことに気づいたパウロは、これ以上深入りさせないように、一家で好景気にわくドバイに移り住むことを決意する。

 そして、運命の輪は東京でも回り始めていた。

 テレビ局の制作部門で正社員として働く優子は、誰からも羨まれる境遇とは…

2019/3/1

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バラカ 下 (集英社文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

下巻に入って一気にディストピア小説の様相を呈してくる。これは、震災後にありえたかもしれないパラレルなSF世界なのか、それとも物語的な粉飾を施した現実世界のパロディなのだろうか。そこは、震災の被害を隠蔽し、来るべきオリンピックに狂奔する世界なのである。小説としてのリアリティには無理も感じなくはないが、それでもこれはまぎれもなく桐野夏生の描く世界だ。ページ数が少なくなっても結末が見えてこない。読者に与える焦燥感こそが彼女の真骨頂である。だから、エピローグの甘さは許そうと思う。

2019/11/18

キムチ27

惰性的にこの国で生きているせいか3・11以来都合の悪いモノは皆 検閲を通過してしか目に触れない様な国と指摘されると~うそ寒い。上下の厚みは特急読書。面白いというより驚嘆。人物名で語るとネタバレになる・・あの2人の男はラストで隣人 顔を突き合わせ、死に立ち会う。震災の大波に人生を呑まれた人々の群れは阿修羅の様で生と死があたかもアイコンの様に行間に浮かんでいる作品だった。つまりは狂言回しに過ぎなかった2人のバリバリガールの痛い末路。人生の縮図を多く咀嚼した時の流れ・・バラカは身2つになり歩みを続けているんだぁ

2022/11/10

アッシュ姉

自然による災害も人間の悪意も桐野さんの手にかかると容赦がない。こんな暗黒社会日本は恐ろしすぎる。バラカを守る真っ当な大人はほんの一握り。さまざまな思惑からバラカを利用しようと狙う大人たちの魔の手から逃げ出すことはできるのか。後半失速気味で最後は駆け足だったのは頁数の都合だろうか。あれの最期はあっけなく、あの人との再会は叶わなかったが、問題を抱えた人だったから良かったように思う。誰より大切な人とは再会できたのだから。

2022/08/29

納間田 圭

警告的な一冊。3.11の直後に8年経過した時を想像した"もう一つの日本"。福島原発の四基全てメルトダウンした設定で被害は僕らが知る災害の数十倍。避難区域は東日本全域に及び…当然東京も避難勧告地域に指定されゴースト化。首都は大阪に移り、天皇も京都御所に引越。主だった会社や大学も西日本に移転し…海外企業も国外に逃げた。2020年のオリンピックは大阪開催予定だ。主人公の薔薇香は…10歳の小学四年になった。彼女の震災履歴の全ては…鬼畜義父K島と放射能の恐怖から逃げるため。7歳の時に甲状腺癌が発症して手術をしていた

2019/03/11

カブ

東日本大震災で福島の原発で大きな爆発があり、日本の東側は放射能の警戒区域となってしまい、首都は大阪へ。復興という名の元に国家規模のイベントの影で、被曝したバラカという少女を通して人種差別、人身売買、宗教を描く。彼女の周りに起こる出来事が悲惨過ぎて、誰を信じていいのかわからなくなる。最後、ちょっとだけ希望を持たせてくれたのがよかった。

2019/06/08

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