あのこは貴族 (集英社文庫)
「あのこは貴族 (集英社文庫)」のおすすめレビュー
門脇麦&水原希子主演で実写映画化! 生粋のお嬢様と地方から上京した会社員、2人の女性の対比で描かれる「東京」の真実と女性の生き方
『あのこは貴族』(山内マリコ/集英社文庫)
「女の人って、女同士で仲良くできないようにされてるんだよ」というセリフが突き刺さる小説『あのこは貴族』(山内マリコ/集英社文庫)。生粋の箱入りお嬢様として東京で生まれ育った華子と、慶應義塾大学に進学するため地方から上京し、東京の荒波を生き抜いてきた美紀。幼稚舎からの慶應ボーイで弁護士の青木幸一郎を挟んで対比される2人を描いた本作は、しかし、キャットファイトを主軸に描いたものではない。むしろ安易にキャットファイトをおもしろがる人々と、女性を分断することによって成立する社会への辛辣な風刺である。
冒頭から始まる華子の親族一同が集まる新年会。華やかに豪勢に品よくとりなされるその会の描写からして、上流階級の浮世離れ感が炙り出されて非常におもしろいのだが、結婚に個人の意思が尊重され、エリートであっても自立した女性を好むようになった今の時代、華子のように「良縁に恵まれ嫁ぐ幸せ」を「普通」と信じてきた女性が、相手を見つけられないまま生きるのはひどく苦しいことだろう、とも思う。華子ほどのお嬢様でなくとも、親世代の「普通」…
2020/12/29
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あのこは貴族 (集英社文庫) / 感想・レビュー
エドワード
私も京都から東京の大学へ入った口で、新入生の頃のアウェイ感に大いに共感する。東京生まれ、東京の高校卒の連中はすでに仲間だった。それが華子の言う「東京の真ん中にある、狭い狭い世界。ひっそりしていたが、そこに属している信頼と安心感は絶大だった。」社会階層だ。翻って<外部=地方出身者>の美紀の言う「同じ土地に人が棲みつくことで生まれる、どうしようもない閉塞感と、まったりした居心地のよさ」が奇妙に符合する。東京が地元であるハイクラス。それは貴族。年中行事と作法に縛られる。でも、貴族でない私たちには自由がある。
2019/06/11
Aya Murakami
ナツイチ2019 地元から遠くの大学に通うために一人暮らしをした経験から、ある地方都市と女子の運命がなかなかに心に響きました。除籍…ではないですが、就活時期とリーマンショックが重なって卒業後の人生計画がうまくいかなかった経験が妙に主人公とリンクして…。 恐らく女性同士でいがみ合わせて、自分の思うようにならない女性に「幸せになるな」というような作中の男性にはこのような人生の苦しみは絶対に理解できないのかもしれませんが。
2020/04/01
あきぽん
見合いを重ねる深窓の令嬢と、上京後風俗で生計をたてる娘。同じ東京のアラサーでも住む世界の違う2人を結びつけたものは…?金持ちvs貧乏の話はよくあるけど、これはアナ雪のように全ての立場の女性への暖かなエールになっています。
2021/06/27
よしのひ
大好きな女優が映画版に出演すると知り読了。1人の男をめぐって女性2人が描かれるパターンはよく見かけるが、相楽の行動は初めての体験だった。なるほど、話の持っていく方向でそっちもあるのかと。教養があって頭がよくないとできなかったことだと思う。また、東京は東京でも華子たちの東京と私の東京は違う世界にあるようだ。話の始まり方と終わり方に品があって好印象な作品だっただけに、2月公開の映画が非常に気になってくる。映像だとまた違った印象を抱くのか。楽しみだ。
2020/10/18
M
第三章から俄然、面白いと思えるように。なんのかんので何十年と変わらない男社会の社会。対等に働くことの困難さを、男性に話しても必ずと言っていいほど“女性は女性でうまくやってる”とか言う。絶対に分からない、解ろうとしない男社会にいたい男、女は男のシモベとしてしか見ておらず解ろうともしないどころか女の特性を利用して男の良いようにコキ使って男にとって使えなければ女同士を敵視させて崖っぷちに追い詰めて自責に仕向けて。せめて華子がその虚しさで自己主張ができてよかった。この期に及んでも幸一郎は鈍感(わざとなの?)だし。
2019/08/17
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