リーチ先生 (集英社文庫)
「リーチ先生 (集英社文庫)」のおすすめレビュー
無名のまま死んだ陶芸家の父は、偉大なるリーチ先生の弟子だった――日本とイギリスの懸け橋となった若者たちの物語
『リーチ先生』(原田マハ/集英社文庫)
“売れる”ことは正義か否か、という論争がいつの世もある。たとえば、本。おもしろければ売れるはずだ。たくさんの人に支持されてこそ、その価値は裏づけられる。そう主張する人も、間違いではないと思う。けれど、たとえば宮沢賢治やゴッホはどうだろうか。どちらも生前は無名だった。評価されるようになったのは、無名のうちから、彼らの作品を根強く「好い」と主張する人たちがいたからだ。実在したイギリス人陶芸家バーナード・リーチを軸に描かれる小説『リーチ先生』(原田マハ/集英社文庫)は、そんな、己の「好い」を信じて貫き続けた人たちの物語である。
1954年の春、バーナード・リーチは古い友人である柳宗悦の強い勧めで、大分県・小鹿田(おんた)の窯を見るべくやってきた。柳とはもちろん「民藝運動」を起こした人物であり(この運動の何たるかは作中でも語られる)、柳宗理の父である。小鹿田焼が世に知れ渡ることになるのは、この柳とリーチのおかげなのだが、物語はリーチの世話役を任された若い青年・高市の目線から始まる。
生まれたときから焼き物に囲まれて…
2019/7/27
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無名のまま死んだ陶芸家の父は、偉大なるリーチ先生の弟子だった――日本と…
2019/11/3
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リーチ先生 (集英社文庫) / 感想・レビュー
KAZOO
4年前に読んだのですが、陶磁器(特に小鹿田焼)の話に興味がありまた読んでしまいました。主人公はバーナード・リーチですが、そのリーチを補佐する親子がある意味原田さんが自分だったらという感じで書かれていて作者の分身のような感じでした。その親子以外は実在の人物ばかりなのでしょう。白樺派や高村光雲親子、河井寛次郎、濱田庄司(リーチに同行してイギリスでリーチの焼き物づくりを助けた)、柳宗悦などなど数多くの人物が出てきます。とくに柳の人物像は面白く岩波文庫やちくま学芸文庫で彼の本を再読しようという気になりました。
2023/10/21
Aya Murakami
ナツイチ2019対象本 リーチ先生…。たしか好書好日でも取り上げられていた人物です。たしかその時に初めて名前を知ったので。 イギリスから日本、そして中国へ行ってまたまた日本に舞い戻り…。民芸という素朴なイメージに反してエネルギッシュな人物像が伝わってきました。むしろ対比としておたがいを引き立て合っているのかもしれませんが。 リーチ先生とかかわった白樺派の皆様も調べてみるとエネルギッシュな皆様だったようです。作中では出てきませんが当時の武士道に対立しまくっていたようで…。白樺派…、読破目標に加えてみようかな
2020/01/06
相田うえお
★★★☆☆19082 凄い重い作品でした(重量が)。NHK朝の連ドラで楽しみたくなるような長い時間軸を持った話。最近でも日本の文化、日本の伝統、日本の心に魅力を感じで日本に来る外人の方がいますが、その辺の日本人よりも極めているんですよね。立派だと思いつつ、日本人が自国文化を知らない事が恥ずかしくもなります。当方、『陶芸』体験教室で『湯呑み茶碗』を作った事があります。もちろん陶芸家になりきって作りましたよ。出来た作品は厚ぼったくて重い〜(重量が)なんちゃって作品でしたが、自分で作った愛着から大切にしてます。
2019/09/01
kanegon69@凍結中
いやぁ、やっぱりスケールが違いますねぇ。物語への惹きつけ力も半端ない。明治・大正・昭和を生きたバーナード・リーチという、陶芸で日英の架け橋となったアーティストの壮大な物語。本当にこんなすごい人がいたのか!と思ったら、やっぱりいたんですねぇ。マハさんの参考文献の量が半端ない!小説では沖亀之助と高市の親子の視点で書かれていますが、この二人はフィクション。しかしマハさんのマジックで、本当にこんな人がいるんじゃないか、いやいてほしいと強く願ってしまうような、愛すべき人物像が圧倒的な仮想リアル感で書かれています。
2019/11/12
シナモン
購入本。陶芸家バーナード.リーチの作陶生活を架空の助手、沖亀之介を絡めながら描くアート小説。亀之介とリーチの出会いから、共に情熱を燃やした作陶生活、別れを通してリーチの人となりが良く分かった。リーチ、柳宗悦、濱田庄司らが民藝運動を推進しながら時代に名を残した芸術家なら、架空の人物亀之介は「民藝…名もなき職人が作るもの」を生きた人なのだろう。時を経て息子高市は有名な陶芸家になるが、どちらも用の美を追求したリーチを師とする芸術家なのだなぁと胸にじーんときました。
2019/11/04
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