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不滅 (集英社文庫)

不滅 (集英社文庫)

不滅 (集英社文庫)

作家
ミラン・クンデラ
菅野昭正
出版社
集英社
発売日
1999-10-20
ISBN
9784087603699
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不滅 (集英社文庫) / 感想・レビュー

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syaori

「人間存在というものは」「個人的な本質をなんらもたない」のだと作者は言う。この物語で描かれるのは、そんな人間の中で「我こそは重要」であろうと願う人々の「闘い」。ローラは唯一の存在となるために不幸や失意を見せつけ、ポールは現代的であるために大切なものを軽々しく扱って墓穴を掘る。重要であるために自我を誇示し、その「自我の焔に焼かれて苦しむ」彼らは「決して幸せになれない」人々なのだ。アニェスという存在は、そんな現代社会に作者が差し出した一茎の勿忘草なのだと思います。その儚げな青い一点は何と揺ぎなく美しいことか。

2019/05/24

syaori

ゲーテの時代と現代の不滅を巡る物語が荘重に軽やかに響き合うこの小説が描くのは、不滅への人類の飽くなき欲求とそれに伴う悲喜劇。『不滅』とは「なにごとか」を残すこと、≪歴史≫の一部になること、自分を知る全ての人の記憶に残ること。そのために人は自我を誇示し、闘い、自分を取換え不能だと示したいと思ったり、それを押し付けてくる世界をやりきれなく感じていたりしている。生きることは「苦しむ自我を運びまわること」。その苦しみと耐え難さ。でも同時に「存在することは幸福である」、その美しさを忘れないようにしたいと思いました。

2018/11/26

zirou1984

再読。ミラン・クンデラの小説群における集大成に位置づけられる本作には『存在の堪えられない軽さ』の様なある種のキッチュな、大仰な感動は見受けられない。代わりに存在するのは壮大な主題と複雑な構成とは裏腹の、一人の友人を暗喩で表現するための長い長い思索なのだ。章構成は交響曲の様に一つの主題を形を変えて表現し、時に重なり合い、時に対位法の様に響き合いながら、その旋律は緩やかに流れ続けている。優れた知性と悲劇的な時代を乗り越えた者が紡ぎ出す、静かな昂揚感が己を満たしてくれている。生きること。それでも生き続けること。

2014/09/14

chanvesa

「人生において耐えられないのは、存在することではなく、自分の自我であることなのだ。(434頁)」アニェスの苦しみはローラのように外部に放出され発散される性質ではなく、内部に集中していったのだ。そして破壊的に。この自我と裏腹の内攻性は、感受性で橋渡しされている。555頁~のポールが語るマーラーの第7交響曲の挿話は、クンデラの嫌味(嘆き)であると同時に、鋭敏な感覚を持ち合わせていたアニェスの一面を偲ばせる。

2016/02/20

zirou1984

「生きること、生きることには何の幸福もない。しかし、存在すること、存在することは幸福である/人生において耐えられないのは、存在することではなく、自分の自我であることなのだ」ポールとアニェスの関係をゲーテとベッティーナと対位法的に描きながら次第に既存の物語の手法から逸脱させていく本作だが、それは歴史の非合理さと合わせ鏡となることで不条理な生を浮かび上がらせている。絶望はしても決してその感情には醉わない―そんな場所から書かれた言葉は自分が自分であることの困難さを抱えた者たちにとても深く、重く突き刺さるのだ。

2013/11/25

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