KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

かもめ (集英社文庫)

かもめ (集英社文庫)

かもめ (集英社文庫)

作家
チェーホフ
沼野充義
出版社
集英社
発売日
2012-08-21
ISBN
9784087606515
amazonで購入する Kindle版を購入する

かもめ (集英社文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

syaori

戯曲。田舎の屋敷を舞台に、大女優とその愛人の有名作家、女優の息子とその恋人で女優志望の少女、息子に恋する屋敷の管理人の娘などが織り成す人間模様が描かれます。「かもめ」は息子と少女の未来の暗示・象徴となりますが、両者が青春の夢から人生の渦に巻き込まれた時、少女がそれに抵抗し生きてゆくのに対し息子は自身の言葉のとおりに「自分を殺す」のが印象的。彼らだけでなく劇中の人々は皆、叶わなかった夢を、人生への緩やかな失望を抱えていて、ままならぬ生をそれでも生きてゆく人々のおもしろうてやがて哀しき人生模様を味わいました。

2022/04/01

mukimi

宝塚歌劇を最近観るようになり知ったことだが、タカラジェンヌ達は台本をもらいその台詞をどう伝えるか、自分達で試行錯誤を繰り返し芝居を創り上げるそう。例えば「ふうん」という台詞をどう発声するかは全体の流れの中で模索される。宝塚歌劇星組かもめの映像を観るにあたり台本調の原作を先に読んだ。登場人物は皆人間臭く、綺麗なまま在り続ける人は1人もいない。複雑な人間心理、年をとること人を恋することの儚さの描写が生々しく真に迫り、腹の底にどしんと響くような満足感があった。どう演じられるのか、舞台映像を観るのが楽しみ。

2019/11/16

Y

チェーホフ本人はこの作品を喜劇だと考えていたそうだが、私の読解力では喜劇だとみなすことができなかった。それでも登場人物が、自分の生き方に疑問を感じながらもがき苦しむ様には心打たれるものがあった。登場人物をとりまく事件や過去は舞台では起こらず、それに対していちいち親切な説明もない。このように劇中十分に設けられた沈黙は、読者個人の解釈を考える余地を与えているといえる。そしてその沈黙からいかに多くの情熱を読みとることが出来るか、読者は試されているのかな。

2013/09/23

森の三時

19世紀末ロシアを舞台に、作家志望の男と女優志望の女を中心とした恋模様。戯曲であり、日本でも何度も舞台になっているとのことです。主人公はもちろん、それ以外の登場人物たちも幾重にも片想いが重なっている。諦めきれない、恋という名の執着心がもたらす結末は…。なかなかおもしろい作品でしたが、私の求めるキュンとなる恋の物語ではない。恋は悲劇、いや皮肉を込めて、恋こそ喜劇さ、とうそぶくには、私は恋にいまだ夢を持っているのでした。

2018/07/10

ころこ

愛の水辺に飛来するかもめのように、登場人物が羽根を安めに来ます。しかし、彼らの目標はバラバラで、愛という仮象に留まらない。右往左往した水鳥は、なぜか水面で溺れてしまいます。彼らの真剣な文脈を離れてみると、些細なことで懊悩している姿は観客の目からは滑稽に映ります。目標のすれ違いが愛のすれ違いとして描かれます。もし、愛が目標に対する志向性を持っているとしたらどうでしょうか。つまり、愛が目標を捏造しており、事後的に両者が逆転しているようにみえるとしたならば、彼らは両者を分離して考えることが出来るでしょうか。

2018/10/02

感想・レビューをもっと見る