ユリシーズ 1 (集英社文庫)
ユリシーズ 1 (集英社文庫) / 感想・レビュー
ケイ
『若き芸術家の肖像』を読んでからすぐに読めばよかったな。最初のスティーヴィンの考え方や彼の周りの人間が好きだったが…、どうやら主役はブルーノのようだ。彼の考え方がよく見えてこない。『意識の流れ』といものは、私には全く理解不能で体感出来ない。この作品を読んでもやはりわからないままだ。訳は練られ、頭の中で声を出して読むとリズムを持つ。訳注は多すぎるだろう。訳をする過程で調べた事を、読者に全部伝える必要はないだろう。古文の単語を全て知らずともリズムを持って読めば楽しい。過度の訳注はそれを壊してしまうように思う。
2017/09/04
のっち♬
38歳の広告取りブルームを中心人物に据え、ダブリンの一日を克明に記録する。単語やセンテンスごとに様々な意味掛けが含まれ、そこから自在に広がりを見せる実験的な表現が特徴的。『オデュッセイア』をモチーフとするが設定も対応も捻ってあり、プロットよりも章ごとに変幻する表現方法の多様性が魅力的だ。3章から『意識の流れ』手法が色濃くなり詩作に耽るスティーヴンの想念がリアルに描かれるが、切れ切れな思考の隙間で性的妄想やあらぬ想像に耽るブルームにも凝っている。7章では新聞記事的な見出しを挟んだりとふざけるにも芸が細かい。
2021/01/07
扉のこちら側
初読。2014年489冊め。「中学時代に世界文学全集で読了したが、ほとんど覚えていない」と話したら職場の人が貸してくれた。12歳では理解できなかったが20代の今でもやっぱり理解はできぬ。ただ読み始めると一気に読了してしまう。1巻は病院の待ち時間に2時間くらいで読了。半分は注釈。
2014/07/29
zirou1984
プルーストの失われた時を求めてと並ぶ20世紀文学の金字塔だが、難解さはこちらの方が圧倒的に上。何せ本編のページ数に対して脚注がその1/3頁もあるという異常な構成が4巻も続き、その上言葉遊びや語呂合わせ、"ジョイス語"とも呼ばれる翻訳泣かせの技法が縦横無尽に繰り広げられるのだから。プルーストが描いた意識の流れが1点から徐々に拡散していく、紅茶に浸透するミルクの様なものに対して、ジョイスの描くそれは個々の単語が語源や発音から派生し、無数の文脈を同時多発的に発生させる電子回路の様相を帯びている。偉業にして異形。
2013/07/26
chanvesa
ブルームの妄想がぶっ飛んでいて、いろいろ共感してしまう。スティーヴン・ディーダラスは『若い芸術家の肖像』の後半のノリの延長だし、取り巻き共が鼻につくので、これはまた挫折かと思っていたが、レオポルド・ブルームの登場により、少し楽しくなってくる。目の不自由な人の手助けをする良心と、謎の女と文通したりすることは両立するということに読んでていて安心する。「6.ハデス」の土葬から派生するうじ虫やよみがえりの可能性を考慮したホットラインの妄想、「8.ライストリュゴネス族」の不味そうな食事マナーと菜食主義、
2018/04/15
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