あなたの愛人の名前は
「あなたの愛人の名前は」のおすすめレビュー
「旦那以外の人に抱かれたい」愛でも恋でもない6つの大人の恋
『あなたの愛人の名前は』(島本理生/集英社)
私たちは同じ部屋で同じ時を刻んでいる相手の“絶望”を、どれだけ知っているのだろう。2018年に直木賞を受賞した島本理生氏の『あなたの愛人の名前は』(集英社)は、そんな疑問を抱かせてくれる、大人の恋愛小説だ。
旦那さん以外に抱かれたいと思ったことはないの?と訊かれた。
こんな衝撃的な言葉で幕を開ける全6編の作品は官能的かと思いきや、切なさが突き刺さる仕上がりだ。
本作には、婚約者や旦那がいるのに他の男性に惹かれる女性や彼氏持ちの女性との関係を断ち切れない男性などが登場する。彼らの行為は許されるものではないかもしれないが、その心中には思わず共感させられてしまう。
人はそんなに強くはないからこそ、日常の中でどうしようもないほどの絶望に襲われた時、温かい“誰か”を求めてしまうこともあるように思う。
毎晩、食卓を挟んで親友のように会話する私たち
私だけが「優しくて家庭的でおっとりしている自分」のことが分からない
間違ってはいないという多数決だけで日々を送り続ける
作中で登場人物たちが抱くこれらの感情は決して他人事…
2018/12/14
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あなたの愛人の名前は / 感想・レビュー
starbro
島本 理生は、新作をコンスタントに読んでいる作家です. 直木賞受賞後第一作の(不倫)恋愛連作短編集でした。オススメは『足跡』です。不変の永久の愛なんて存在しないと思います。必ずしも不倫を肯定しているわけではありませんが・・・
2019/01/09
ウッディ
平穏に暮らす女性が、小さな冒険心で踏み出し、結んだ密やかな関係。パートナーへの罪悪感を抱きながらも身体を潤し、心の隙間を埋めてくれる男性との逢瀬は、背徳と呼ぶには穏やかで、愛情と呼ぶには頼りない。婚約者がいるにも関わらず、浅野と身体の関係を結んだ瞳は、少しずつ浅野に心が惹かれていく。身体から始まった関係だから、気持ちの傾きを伝えることできず、一歩が踏み出せない。そんな二人の関係がぎこちなく、少し切ない。テーマ自体は重苦しいのに、清清しい読後感になるのが不思議な短編集は、直木賞受賞第1作の読み応えでした。
2019/04/02
いつでも母さん
これまたそそられるタイトルを持ってきましたね~『愛人』異性であって、必ずしもそれが女性とは限らない。なので『あなたは知らない』その対の『俺だけが知らない』は小気味よかった。瞳と耕史があのままゴールインするとは思えなかったが、男同士の対面はドラマの場面のようだった。別れの短歌は最低だけれど思い切れる。赤い糸など信じないが男女の仲は一つとして同じでは無く、どこで糸が手繰られるか手繰るのか・・恋愛の不思議でもある。短編6作どれも面白く読んだ。タイトル作とリンクしてる『氷の夜に』も好みだった。
2019/01/10
きさらぎ
想いが伝わらない切ない話ばかり。目的だけの関係と割りきれたらこんなに苦しまないのに。今すぐに会いたい、触れたい、永遠に訊けない「私をどう思っていますか」他に男がいることに安堵するのかがっかりするのか確かめる勇気もなく、出会ってからずっと食べてセックスするだけのセフレ同然。単なる遊び相手と言われても仕方ないけれどどれだけ本気で愛されているか本当は気づいている。ただ正面から向き合わなかっただけ。一度機会を逃して歯車が狂うとなかなか戻れない。「あなたは知らない」「俺だけが知らない」結局知らないのは男だけ。
2019/05/20
うっちー
何とはない連作短編集
2019/01/21
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