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アタラクシア

アタラクシア

アタラクシア

作家
金原ひとみ
出版社
集英社
発売日
2019-05-24
ISBN
9784087711844
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「アタラクシア」のおすすめレビュー

望んで結婚したのに苦しい。感情に従う? それとも世間体が大事? 女たちがもがく姿を捉えた『アタラクシア』

『アタラクシア』(金原ひとみ/集英社)

 人に恋愛相談を持ち掛けると、「結局は、自分がどうしたいかじゃない?」と答えを返されることが多いけれど、実際にそれをやり遂げるのは誰でもむずかしいだろう。相手が本当に好きな人なら“都合のいい扱い”を受けてもいいと考える人もいるだろうし、たとえ結婚した相手であっても、別れたいと思ったらすぐに離婚するという選択肢もある。人間関係において、「自分の感情」を優先することはとても大事な要素である。けれども、それだけで全てを決めることはできないのが現実だ。私たちは結局、恋人がいるというステータスだとか、結婚している事実だとか、この先も育てなくちゃいけない子どものありがたい存在とか、さまざまなものに縛られている。

『アタラクシア』(金原ひとみ/集英社)に登場する英美も、見えない何かに縛られる女性のひとりだ。デキ婚した夫はいまだに浮気ぐせの直らない遊び人で、同居している母親は顔を合わせるたびに文句しか言わない。おまけに“かすがい”であるはずの子どもは日に日に言動が悪くなっていき悩みの種のひとつ…。当事者でなければ、「離婚しち…

2019/8/14

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不倫、暴力、無関心――「こんなはずじゃなかった…」結婚とは何かを考えさせられる衝撃の話題作!

『アタラクシア』(金原ひとみ/集英社)

 結婚とは一体何なのか。誰もが幸せになることを願って結婚するはずなのに、なぜこうも苦しく救い難い世界が存在するのか。本書『アタラクシア』(金原ひとみ/集英社)に登場するのは、結婚後に夫以外の男性と過ごしている妻や、夫の暴力に悩む女性、妻のことを愛していながらもどう接していいのかわからない夫など、結婚生活に幸せを見出せない人々だ。「結婚=幸せ」という図式を見事に裏切ってくれる小説となるだろう。

 かつてモデルをしていた由依は、フランスから帰国後、翻訳者として働いている女性。小説家の夫・桂と暮らし何不自由なく生活しているように見えるも、フランス時代に知り合ったシェフの瑛人と逢瀬を重ねている。一方の瑛人は、由依の夫の存在を意識しながらも、それでいいというどこか割り切ったスタンスで彼女を必要としている男性だ。由依の夫の桂は、どこか摑みどころのない妻にどう接していいのかわからず途方に暮れている。ある日妻から離婚したいと切り出され、理由を聞き出すこともできずに彼女を無理やり犯すという暴挙に出て自己嫌悪に陥るのだ。

 瑛人の…

2019/7/11

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アタラクシア / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

ヴェネツィア

6人の登場人物それぞれの視点から語られる物語。この小説においては、リアリティのあり方が通常のそれとはかなり違っている。彼ら同志で語られる会話は、互いに親しいはずであるにもかかわらず、いたって論理的、分析的であり、その意味では非日常的である。とりわけ由依は、その行動や思考が捉え難い。それは夫の桂にとってのみのことではない。また、小説作法も文体も違うのだが、どこか三島のそれを思わせる。そして、タイトルの選び方などからは倉橋由美子との相通性も感じるのである。いずれにせよ、小説を読む楽しみに満ちた作品である。

2022/01/10

starbro

金原 ひとみは、新作中心に読んでいる作家です。本書は、ヒリヒリする仏蘭西被れ平静不動東京不倫恋愛事情でした。やはり「不倫は文化だ by 石田 純一」ということでしょうか? 【読メエロ部】

2019/06/10

うっちー

私にはわからない世界でした

2019/06/16

モルク

フランス帰りの元モデルの由依と小説家の夫桂。人妻と知りながら彼女と逢瀬にはしるシェフ瑛人。瑛人の店のパティシエ英美は浮気夫と口煩い実母そして反抗的な息子に悩み、出版社に勤務する真奈美はDV夫に悩みながらも不倫をやめられない。誰もが問題を抱えながらも表にはあらわさず…複雑な人間模様、何かモヤモヤしているうちに最終章を迎える。こんな過程がありそして衝撃が…それぞれ正直に生きている…が、反対に自分を隠して生きている荒木が気になってしかたがない。

2020/02/02

ちゃちゃ

人は愛という希望を失うと、孤独という絶望の淵へと落ちてゆくのだろうか。未来へと繋がる生の「確かさ」を見いだすことができず、信じられるのは今この瞬間だけ。「アタラクシア」―乱れない心、乱されない心を求めるも、人は狂おしいほどに愛を求め、愛に苦しむ。たとえそれが刹那的で倒錯した愛であっても…。物語は由依と夫の桂、不倫相手の瑛人を主軸に、彼らを含む6人の視点から描かれる。ひりつくような痛みを伴う鋭く繊細な心理描写や巧みな人物造形が、それぞれの愛と承認への渇望を浮き彫りにして、幸せとは何かを問いかけてくる。

2019/11/18

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