生のみ生のままで 下
「生のみ生のままで 下」のおすすめレビュー
綿矢りさ、新刊のテーマは“女性同士の恋愛”! 圧倒的な新境地『生のみ生のままで』
『生のみ生のままで』(上・下)(綿矢りさ/集英社)
友達と恋人の違いとはなにか。気の置けない友人との食事の席で、ときどきテーマとなるネタだ。会う頻度だろうか、キスをするかどうかだろうか。大きな違いは、セックスではないか。いや、でもセックスは、恋人とでなくてもできる。ではいったい、友達と恋人を分けるものとは、なんなのか。
おそらく恋に落ちたとき、人はそんなことを考えてはいられない。
生(き)のままの酒を口移しで無理やり飲まされて、気づけば自分から飲み干しにいっているような。天然の酩酊が視界を熱く歪ませて呼吸を弾ませる。段々とベッドの上で起きていること以外すべてがどうでも良くなってゆく。
どこからが恋人かなんてどうでもいい、ただ互いに相手を求め、触れ合った部分から溶けてゆく。その情動こそが恋なのだと思わせる、圧倒的な恋愛小説が誕生した。『生のみ生のままで』(上・下)(綿矢りさ/集英社)だ。
25歳の夏。逢衣(あい)は、結婚も視野に入れて交際している恋人と出かけたリゾートで、彼の幼馴染とその彼女・彩夏(さいか)に出会う。
芸能活動をしているという彩夏の…
2019/6/27
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生のみ生のままで 下 / 感想・レビュー
ヴェネツィア
暗転した下巻。再開後の二人の、というよりは彩夏の再生が語られる。逢衣の戸惑いはそのまま読者のそれに重なる。もちろん、そのために視点は逢衣に置かれている。畢竟は逢衣の献身が彩夏を快復させたのだが、その基底にあったのは彼女の愛だろう。ヘテロセクシュアルの場合よりも、それは一層に純化され無償性を高めているように思われる。性的交渉の場面も描かれるが、それはエロティックではあるものの、互いに攻撃的ではなく、また支配的でもない。それが彼女たちの交わす愛の行為の特徴だろう。なお、結末部は通俗的に過ぎるか。
2023/06/17
starbro
上・下巻(このボリュームでは分冊する意味なし)、440頁弱完読しました。現実の同性カップルを取り巻く環境を考えると、綺麗にまとまり過ぎな気がしました。LGBTの増殖や少子化の進行は、人口爆発に対する地球の自浄化作用なのかも知れません。【読メエロ部】
2019/07/17
パトラッシュ
(上巻から続く)第三は結末にカタルシスを欠く点。作者の意図は「恋愛を通じての人間再生」にあったようだが、彩夏と逢衣は外の力で引き離されるだけで『赤と黒』や『はつ恋』のように恋愛自体で苦しむ姿がほとんど描かれていないため感動が薄いのだ。これらが重なって、小説としては中途半端な感が拭えない。半分以下に短縮して颯と彩夏と逢衣の三角関係に絞った心理小説に仕立てるか、逆に恋愛のプロセスや二人の衝突、凛の悪意の事情や逢衣の彩夏への疑念などを500枚ほど加筆した方が成功しただろう。要は作品構成上のバランスの問題なのだ。
2019/07/17
hiro
ひと昔前ならば、女性同士の恋愛がテーマの小説は、読む前から構えていただろう。しかし、最近はLGBTがテーマのものも多く、それらを読んでいたことと、綿矢さんの読みやすい文章のおかげですらすら読めた。芸能事務所によって引き裂かれた二人は、彩夏の病気によって再会を果たす。彩夏の闘病生活を献身的に支える逢衣だが、彩夏は逢衣にも心を閉ざしていた。元の二人に戻れるようにと応援しながら読んだが、この後のエピソードの一部は、どこかでみたことがあり、LGBTがテーマのものが多くなると、もうひと工夫が必要かもしれない。
2019/07/24
やっちゃん
上巻P149「当たり前だけど仕組みも構造も本当によく知っていた。繊細さを心掛けながら私は好きなように指を動かしたが、それは自分の好きなやり方が相方に伝わるということで、少しばつが悪かった」経験したくないけどなるほどなと思った。
2022/12/01
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