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透明な夜の香り

透明な夜の香り

透明な夜の香り

作家
千早茜
出版社
集英社
発売日
2020-04-03
ISBN
9784087717037
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「透明な夜の香り」のおすすめレビュー

“亡き夫の香り”を求める女性が抱える後ろ暗い秘密とは――どんな香りでも作る天才調香師の切なく優しい物語

『透明な夜の香り』(千早茜/集英社)

 振り返れば毎日、何らかの香りに包まれ、癒されながら生活しているように思う。朝は、コーヒーの香りで目覚め、出掛ける前にはお気に入りのピオニーの香水をひと吹き。お昼は焼きたてのパンの香りに誘われて、気がつけばパン屋に足を踏み入れているし、疲れた夜はアロマの加湿器をつけて眠りにつく。そういえば、ふとした瞬間に嗅いだ香りで、とうに忘れていたはずの懐かしい記憶がブワッとよみがえることもある。香りは、想像以上に人と密接に関わっていて、深い世界なのかもしれない。

 千早茜さんの『透明な夜の香り』(集英社)は、そんな「香り」の持つ力や不思議が、心に傷を負った繊細な人間たちの目線で、身体のすみずみまで深く染み入るように綴られた小説だ。

 物語は、心に傷を負い、部屋にこもりきりだった元書店員の一香(25)が、古い洋館の家事手伝いのバイトの面接に行くところから幕を開ける。香料植物や薬用植物でいっぱいの庭園がある重厚な雰囲気の洋館には、小川朔という天才調香師が暮らしていた。

 短髪で、かすかに灰色がかった目、まるで“紺色”のような暗く見え…

2020/4/25

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 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、雑誌『Popteen』の専属モデルを経て、『仮面ライダーゼロワン』のヒロイン・イズ役でドラマデビューを果たし、注目を集めている鶴嶋乃愛さん。「毎日自分が何が好きで、何が嫌いかを研究しています」という深いこだわりをもつ鶴嶋さんが、大好きな作家・千早茜さんと本のこと、更にはファッションについて語ってくれた。

 趣味は読書という鶴嶋さん。2018〜19年は『仮面ライダーゼロワン』や雑誌の撮影で、寝る暇もないほど忙しい時期もあったそうだが、そんなときでも「なるべく本が読みたい」のだという。それほどまでに本好きな彼女だが、読むようになった理由が面白い。

「本に興味を持ちはじめたのは小学校4年生の頃。私、どちらかというと読むのが早い方なので、マンガだとすぐ読み終わってしまうんですよ。同じマンガを繰り返し読むこともしますけど、小説なら長い時間読めるからいいなと思って。小学生のときは、ずっと図書室に行ってましたね。なぜか『アン…

2021/2/12

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透明な夜の香り / 感想・レビュー

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starbro

新型コロナウィルス対策購入シリーズ第50弾(遂に50まで来ましたが、もう少し続きます)、千早 茜は、新作中心に読んでいる作家です。天才調香師の連作短編集、美しく馨しく怖ろしい物語でした。香りだけでここまで推理出来ると、調香師探偵も成立しそうです。

2020/05/18

さてさて

私達が日々生きる中では、その瞬間の無意識な呼吸活動の中で、無限と言ってもいいほどの匂いや香りと接することが避けられません。そんな匂いや香りと共に仕舞われる記憶達。そして、『そのひきだしとなる香りに再び出会う』時に仕舞われた記憶が蘇る、そんな様が描かれたこの作品。文字だけの単行本の中から、音が聞こえ、色が浮かび上がり、そしてさまざまな香りが漂ってくるのを感じたこの作品。千早さんの圧倒的な筆の力によって、本来感じないはずの聴覚と嗅覚が刺激されるという、なんとも不思議な体験をさせていただいた、そんな作品でした。

2021/12/27

ウッディ

鋭い嗅覚を持つ天才的な調香師・朔の元で、助手兼家政婦として働くことになった一香。彼女は引き籠りの兄を見捨てた後悔の香りをまとっていた。タイトルのイメージ通りの静謐で神秘的な香りをモチーフにしたファンタジーでした。特に病気の息子に生きる希望を与える香りを作る話に泣けました。香りは時や場所を選ばず、唐突に心の中に入り込んでくる。そして、「香りは脳の海馬に直接届いて永遠に記憶される」。楽しい思い出、切ない記憶、ふとした瞬間に過去を連れてくる香りがあるからこそ、朔と一香の未来が明るいものであってほしいと願う。

2020/11/14

mint☆

タイトルが素敵。そしてこの小説の雰囲気がとても好き。心に傷を負い引きこもり気味になってしまった一香。人の感情さえ匂いで感じ取ってしまう、超人的な嗅覚を持つ調香師、朔。匂いを表現するのは難しそうだがこの本からは様々な香りが匂い立つ。香りだけではなく一香を通して見る色の表現も物語の輪郭を鮮やかにする。仄暗い危うさを感じるのに温かくて不思議で静けさも感じる。また好きな本に出会えた。

2020/08/22

いつでも母さん

カバーの不穏な感じとタイトルに惹かれて。『噓は、におう。』ドキリとする言葉じゃないか!天才調香師・小川朔が言う言葉はどれも心に刺さる。秘密を抱えたまま自らの処し方に迷うバイト・一香が、依頼人たちに応える朔や新城、源さんと接することで再生していく物語。視覚や触覚、聴覚だけでなく嗅覚から思い出すことはないか?懐かしい匂いは思い出も加味されて恋しさが募るばかりだ。父の整髪料の匂い。この世では会うことが叶わぬ人の匂い。どの思い出にも私だけが感じる匂いがある。それは狂おしいほどに私をあの日に引き入れる。

2020/05/06

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