KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

事件は終わった

事件は終わった

事件は終わった

作家
降田天
出版社
集英社
発売日
2022-08-26
ISBN
9784087718065
amazonで購入する Kindle版を購入する

事件は終わった / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

パトラッシュ

犯人が逮捕され事件は解決しても、偶然関わってしまった被害者の心には深い傷が残る。彼らのその後を描く作品は幾つもあるが、ここでは地下鉄内での無差別殺傷から逃げた者が非現実的な幻想でPTDSから救われていく。あり得ない声や匂い、悪夢や都市伝説に囚われながら、そこに秘められた意味を探り当てると、ようやく縛りつけていたトラウマから解放されて前に踏み出せるのだ。本当にあったのか単なる思い込みかが不明確なファンタジー性は異色だが、死と縁遠い現代人には「生き残ってしまった罪悪感」こそ最悪の苦しみなのだと思い知らされる。

2023/03/31

いつでも母さん

地下鉄内で起きた無差別殺傷事件。犯人は逮捕され。確かに事件は終わったー乗り合わせた人々のそれから(それまでも)を丁寧に掬った連作6話。事件発生後しばらくはTVも新聞も追いかけて私はそれで大まかなことを知るが、その後とかその周辺の事情は知る由も無く、新たに起こる事件事故に意識は移ってしまう。犠牲になった人間の証明も含めてどの話も他人事とは思えない。読後、装画のイメージが違って見える。人生は思いもしないことで生き辛くなったりするけれど、ほんのちょっとの人とのふれあいで救われたりもするのだ。

2022/09/25

タイ子

地下鉄車内で起きた無差別殺傷事件。事件が終わると日常生活に戻るのも早い。だが、そこに居合わせた乗客の中には事件の光景が忘れられずに苦しい思いで過ごしている者がいる。引きこもりになり、どこからか奇妙な音が聞こえ始めた男性。軽症で済んだ妊婦の女性は霊が見え始め、彼女の心に巣食うある秘密が暴かれ…。同級生の男子と女子が事件をきっかけに自分の道を探し始める。犯人を止めようと殺された男。そして、最終章で繋がっていくそれぞれの人生の接点。事件に遭わなければ、いや遭ったからこそ気付くこともある。降田さんらしい作品。

2022/10/24

しんたろー

電車内で起きた無差別殺傷事件に関わった者たちのその後が描かれた連作短編集。彼らがPTSDに苦しむ姿がサスペンス&ホラー的な味付けなのでハラハラするが、心情もキチンと伝わってくるので主人公に寄り添える。希望を持てる終わり方にしてあるので読後感が悪くない。犯人の背景や動機などは省略されていて物足りなさも感じたが、それは好みの問題かも知れない。2話に渡って登場する高校生たちが清々しくて、青春ものとしても楽しめた。私には「ミステリ作家」としての印象が強い降田さんだが、本作で幅の広さを感じる事ができたのも良かった。

2023/02/22

モルク

地下鉄車両内で起こった無差別殺傷事件。迷彩柄のジャケットを着た男がマタニティマークをつけた女性を切りつけさらに彼女を庇って向かってきた老人を刺殺した。事件は終わってもその事件によって傷付いた人々をホラーファンタジーを交え描く。犯人の隣に座っていた体格のよい青年、真っ先に逃げる様子がSNSにあがり特定される。仕事も人間関係も順調だった彼が引きこもりとなる。2話目の怪我をした妊婦、心身崩れていったその真の原因が切ないなど他にも事件に遭遇したことで日常が壊れていった人々。心の傷を受けた被害者は思った以上に多い

2023/06/03

感想・レビューをもっと見る