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ダブリンの市民

ダブリンの市民

ダブリンの市民

作家
ジェイムズ・ジョイス
高松雄一
出版社
集英社
発売日
1999-06-16
ISBN
9784087733136
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ダブリンの市民 / 感想・レビュー

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燃えつきた棒

【冬の短い日々がおとずれると、食事が終る前に薄暗くなった。ぼくらが通りに集まるとき、家々はもう黒ずんでいた。頭上の空のたたずまいは、刻刻と変化する菫いろだった。街灯が弱い光を空に向ってかかげた。冷たい空気が肌を刺すので、ぼくらは体がほてるまで遊んだものだ。静かな通りに喚声がこだました。遊びの成り行きにつれて、裏手の暗い泥んこ道にもぐりこみ、粗末な家々から出て来るいじめっ子どもの挟み打ちをすり抜け、灰溜めの悪臭が立ち昇る暗いじめじめした庭の裏木戸にたどり着き、暗い臭い厩まで行くと、ー以下略ー】(アラビー)

2022/05/09

荒野の狼

15の互いに独立した短編で構成された20世紀初頭のダブリン市民を描いたものです。実際のダブリン近郊の地図が4枚ついており、脚注は特に、登場人物が描かれている通りや建物などについて詳しく、ダブリンの生活が身近に感じられるような体裁になっています。相互の物語に関連はないのですが、物語の主人公が最初は少年期、次に青年期、成熟期、社会生活と移っていくので、第一話から順に読むことをお勧めします。また、同時代のことが描かれているので、同じ登場人物が端役で、別の物語に登場したりします。

2009/03/18

ELLIS

どこまでが架空で、どこまでが実在した人物かはわからないけれど、そんなことが気にならないほどのリアリティをもって、ジョイスが生きた時代のダブリンが浮かびあがる。まるで同時代にダブリンに生きて、誰かから噂話しを聞いているかのよう。それぞれの人生の、ダブリンの光と影。ギネスやベイリーズを飲みながら飲んで欲しい。文庫本と違って注釈や解説も充実していて素晴らしい。1つの話しの登場人物が他の話しにも出てくることで、リアリティが増しているのは疑いないと思うけれど、その関わり具合がなんとも心憎い。短編好きなら必読の1冊。

2010/12/16

zakuro

最後の「死者たち」はよかった。クリスマスパーティの帰り、突然沸き起こる性欲の行き着く先は…からの、妻の告白という展開は乱歩みたいだった。他の短編はみな、盛り上がり無しオチ無し。イギリスの階級社会もよく理解できていないのに、そこにさらにアイルランドの民族問題が背景にあるとか、もうお手上げですわ。性的倒錯者の話の鞭打ちが連発するところで笑わせてもらったので、まあ時間返せとまでは言わないでおこう。

2021/01/18

スイ

「寛容の涙がゲイブリエルの目にあふれた。彼じしんはこれまでにどの女にもそういう感じをもったことはない。だが、そういう感情こそ愛にちがいないということはわかる。」 本人には一大事でも、他人にはよくあること。 そんな掌編ばかりなのだけど、描写が圧倒的な上手さで引き込まれる。 目の前で見ているようで、埃や料理の匂いを感じたような気さえした。 特に、最後の「死者たち」は見事。 長編を読んだような充足感だった。 訳もいい。

2016/03/15

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