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きみはだれかのどうでもいい人

きみはだれかのどうでもいい人

きみはだれかのどうでもいい人

作家
伊藤朱里
出版社
小学館
発売日
2019-09-18
ISBN
9784093865517
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「きみはだれかのどうでもいい人」のおすすめレビュー

「今月のプラチナ本」は、伊藤朱里『きみはだれかのどうでもいい人』

『きみはだれかのどうでもいい人』

●あらすじ● 県税事務所に勤める、年齢も立場も異なる女性たち。同期が休職したことで、納税担当に異動させられた若手職員・中沢環。納税担当から病休を経て総務担当として働く染川裕未。週に一度の娘との電話を心の支えに、毎日の業務や人間関係もこなすベテランパート・田邊陽子。お局様と名高い、総務担当の筆頭主任・堀。4人の目に映る景色をそれぞれの視点で描く連作短編集。見ている景色は同じようで違っていて――。 いとう・あかり●1986年、静岡県生まれ。2015年、「変わらざる喜び」で第31回太宰治賞を受賞し、同作を改題した『名前も呼べない』でデビュー。他の著書には『稽古とプラリネ』、『緑の花と赤い芝生』がある。

伊藤朱里小学館 1700円(税別) 写真=首藤幹夫

編集部寸評  

忘れる? 許す? 祈る? 〝どうでもいい〟という言葉は、フラットな〝関心がない〟ではなく、否定的なニュアンスを強く帯びている。対象への怒りがあり、でもそれを口に出しても仕方ないから黙っている、という無力感。一見平穏な職場に〝どうでもいい〟の苛立…

2019/12/6

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「だれかの大切なひと」になるために、必要なこと。『きみはだれかのどうでもいい人』/佐藤日向の#砂糖図書館㊺

 人間関係を築くのは、とても難しい。自分の意思を貫き通せば我儘と言われ、相手の意見に合わせれば八方美人と言われる。じゃあ私はどうすればいいんだと悩むこともあったが、そもそも一度私の言動が気になった時点で相手にとって、私が何をしてもとにかく気になる相手になってしまうのだろう。

 今回紹介するのは伊藤朱里さんの『きみはだれかのどうでもいい人』という作品だ。本作は県税事務所で働く女性4人の、苦悩や働くことの大変さを濃縮した連続短編集となっている。読んでいる途中も読了後も、羅列されている言葉があまりにも刺さり続けて、とても痛かった。どの登場人物も実際にいそうな人達ばかりで、かつ、自分がこういう風に見えているのかもしれないと思いながら読み進めると、私のこれまでの言動が誤って伝わっていたかもしれないし、反対に私が誤解している可能性だってあると思えた。

 どんな職場でも、年齢や立場が違う人と一緒に働かなければならない。そしてそれぞれがこれまでの仕事を通して得た経験値によって、考え方や在り方は変わってくるため、相手に対して「どうしてこれが出来ないんだ」と感じてしまう…

2022/6/11

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きみはだれかのどうでもいい人 / 感想・レビュー

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ウッディ

県税事務所に勤める4人の女性、公務員試験をトップ成績で合格した野心家の中沢環、心を病んで部署を異動した染河裕未、今はパート職員として働き、環や裕未と同世代の娘を持つ田邊陽子、結婚もせず職歴を重ね、お局のような立場の堀主任。自分に自信がなく、注意されるとオドオドしてしまう須藤に対する苛立ち、同情、諦めなど4人の色々な感情がぶつかります。閉鎖的な人間関係の中で、要領の悪い人に暴力的な言葉を投げつけてしまう人間の闇があることはわかっていても、目を背けたくなる。初読み作家でしたが、ドヨーンとした読後感でした。

2020/01/28

ゆのん

出版社から頂いたプルーフにて読了。県税事務所の納税課で働く年齢も立場も異なる5人の女性達。あるある、いるいると楽しく読める部分と思い当たる嫌な状況やフレーズがあったりして落ち着かない気分にも…。女性ならではの働く大変さがストレートに描かれている。女ってつくづく大変で厄介な生き物だなぁと溜息混じりに読了。

2019/09/19

おしゃべりメガネ

太宰治賞受賞作家さんのなんともシリアスな作品です。働く女性の社会におけるパワハラの話です。とにかく読んでいてツラかったです。とあるアルバイトを巡り、関わる女性社員たちから語られるそれぞれの話がなかなかへヴィでした。単純にキレイごとだけでは決してすまされない働く女性における'ルール'をかなり責め込んで書いています。年代や立場がそれぞれに違えど、皆自分なりのエゴを持ち合わせており、誰が正解というのでもないのかなと。女性ならではのドロドロした人間関係をこれ以上ないくらい、おそらくリアルに書いているんだろうなと。

2020/03/22

R

税金滞納する人から回収を行う役所の物語なんだが、描かれるのはそういう職場にいる女性たちの人間関係でした。読んでいて、とてつもなく疲れた、重くてしんどい、やるせないと嘆息見舞ってしまう感じで、様々な立場の女性たちが、ひとつの事件についてどう関わったか、オムニバスで一人称語りをさせるようなものだった。誰に感情移入をというのではなく、誰もが背景に何かを抱えていて、それが現在と過去とごたまぜになって、ただしんどい、そういう連綿としたものをじっと見つめているような、煉獄を描いていたように思う。

2020/02/12

mint☆

職場の苦しい人間関係の話と言うのは簡単だけど、立場が違えば考え方も違うし、誰が悪いとかそういう話でもない気がする。自分は繊細ではないので繊細な方の心情に共感するのは難しかった。さらに理解に苦しむ部分もあり確認したい気もするけれど、もう一度読み返すような元気もなくなってしまうくらい何かを吸い取られてしまった気分。

2022/03/20

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