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9月9日9時9分

9月9日9時9分

9月9日9時9分

作家
一木けい
出版社
小学館
発売日
2021-03-12
ISBN
9784093866095
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「9月9日9時9分」のおすすめレビュー

タイで育った女子高生は、日本の文化や思想に戸惑う。彼女はそこでどんな愛を見つけるのか

『9月9日9時9分』(一木けい/小学館)

『9月9日9時9分』(一木けい/小学館)は、しあわせの基準が異なる者同士の愛を主軸に描かれた青春小説だ。バンコクからの帰国子女である主人公は、日本の高校生活を通じて家族、恋人、友人との愛について葛藤し、学んでいく。相手を傷つけても、自分が傷ついても、相手を理解したいと願い続けること。その願いの力は、ときに暴走してしまうこと。そんな一つひとつの痛みを経験から知っていく主人公・漣(れん)の心情の変化を、読者は追体験する。

 数多の青春小説と大きく異なる点は、学校生活というクローズドな視点と、日本とタイというグローバルな視点を行き来しながら、しあわせの基準について考えさせられるところだ。幼少期からタイで暮らしてきたため、漣の価値観はタイ文化の影響を強く受けている。だからこそ日本の風景や慣習、思想が漣の目には新鮮に映り、ときに理解できない。

 漣は父母やタイ人の愛を受け、経済的にも不自由ない暮らしをしてきた。プール付きの家や家政婦、ふだんから声を荒らげず、相手を思いやる文化を育む人々。それが日常だった漣にとって、日本の…

2021/4/13

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9月9日9時9分 / 感想・レビュー

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さてさて

かつて暮らしたタイのことを懐かしむ主人公の漣。この物語では、そんな漣が”初恋”の人を強く想うその先に『あの人に恋すること=噓をつくこと』と思いながらも高校生の青春をひたむきに生きていく姿が描かれていました。バンコクに暮らす一木けいさんだからこそ描けるリアルなタイの描写に感嘆もするこの作品。予想だにしなかった重々しさの極みとも言える物語展開の珍鬱さに心痛めるこの作品。三浦しをんさんが”影を帯びながらも、なんてまばゆい小説だろう”と評されるその感覚。そんな感覚が痛いほどに伝わってくるとても印象深い作品でした。

2023/01/24

美紀ちゃん

いい話だった。一気読み。家族には絶対に言えない人を好きになった。 姉の離婚した夫の、弟。漣の両親はとても優しい。タイで9は「進む」という意味。タイトルは幸運の意味。朋温は優しいし素直。応援したくなる。「別々の場所で幸せになるくらいなら、同じ場所で不幸になりたい」辛くても一緒にいたいということ?しかし、お姉ちゃんがかわいそうすぎる。曜子の話が深い。もう無理という負担がかかってからの進化。人生、悔やんだり大怪我をしたり誰かを傷つけたり、失ったりする。そこから抜け出せないわけではない。人は変われる。進化する。

2021/04/03

fwhd8325

少女の恋愛を描いているはずなのに、何でこんなにも息苦しいのだろう。帰国子女という設定で平穏な物語なのかと思っていましたが、こんなにもたくさんの問題を描いているなんて驚きました。ややテーマが多く、野次馬的には姉の抱える問題の方に興味が大きいのだけれど、こうした環境のなかで、主人公漣の成長の姿は目映く感じます。友人たちとの交流が沢かです。

2021/04/30

のぶ

タイと日本を舞台にした、恋愛小説で家庭小説でもあった。主人公のバンコクからの帰国子女で高校1年生の漣は、日本の生活に馴染むことができないでいた。そんな時に、高校の渡り廊下で見つけた先輩に、漣の心は一瞬で囚われてしまう。どうしようもなく惹かれてゆくが、あるとき、彼が好きになってはいけない人であることに気づく。そこには漣の心の葛藤と、家族に対する裏切りが描かれていた。重ねてこの作品にはDVがもう一つのテーマになっていて、柔らかな文章の中に、深刻なものが込められていた。タイ在住の一木さんらしい一冊だった。

2021/03/31

みっちゃん

苦しいよ。「好きになってはいけない人」って言われても、だって好きになってしまったんだもの。両親の「何でまたこの人なの」っていう戸惑いや怒りにも似た気持ちもわかるけれども、でも本人たちには何の落ち度も責任もないんだよ。辛すぎる思いをして、心にも身体にも深い傷を負った姉が、まるでその仕返しみたいに主人公を監視し、束縛する常軌を逸した行動や言葉も痛々しくて見ていられなかった。ラスト、主人公の勇気ある行動は彼との時間があったからこそ、それはまさしく!なんだけど9時のこの9分後、何かが待っているんだろうか…

2021/08/08

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