家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった
「家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった」のおすすめレビュー
車いすユーザーの母、知的障害のある弟、急逝した父――SNSで思わずシェアしてしまった、笑いと涙の“あのエッセイ”が刊行
『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(岸田奈美/小学館)
仕事が大変、育児が大変、介護が大変、家計が大変…。人生とは“大変”の一里塚で構成されているものなのかもしれない。ツイッターに流れてくる誰かの“大変”に触れては、“あー、これ、つらいよなぁ”と共感してみたり、“私の方が全然大変じゃん!”と毒づいたり、落ち込んでみたり。コロナ禍でみんな揃って巣ごもりしていたときは、その“大変”合戦がヒートアップしていたように思う。そんななか、ツイッターのなかを流れてきたブログサービス「note」のエッセイに思わず引きこまれ、シェアしてしまった人も多かったのではないだろうか。
“赤べこ”“ブラジャー”、そしてタイトルともなった“家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった”というワードに、“あ、あのときの!”と、もう1度会いたかった人と偶然、再会したみたいにうれしくなってしまう人も多いのではないだろうか。あのエッセイが、『家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった』(小学館)として、ついに1冊の本になった。
車いすユーザーの母、知的…
2020/10/1
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家族だから愛したんじゃなくて、愛したのが家族だった / 感想・レビュー
モルク
中2で父親が突然病死し、高校生の時母も生死をさまよい一命をとりとめたが車椅子生活、4つ下の弟はダウン症という環境のもと、奈美さんは常に前を向いていた。泣けるが笑えるエッセイ。つらいことも苦しいことも投げ出したくなったことも多々あると思うし、同世代が楽しく遊んでいるなかなんで自分だけ…と、思うこともあるだろう。奈美さんに負けず劣らず明るく笑い飛ばすお母さん、心やさしい弟、お父さんも魅力的だったんだね(英語版ファービーの話は最高)。幡野さんが撮影した東京駅での家族写真の笑顔がこの上なく素敵!思わず泣けた。
2022/04/22
mukimi
私たちは、おセンチに溜息つきながら暗い顔でじめじめ生きることも、不幸も起きたことは仕方ないと拘らず喜びにフォーカスして明るく顔を上げ生きることも、自ら選択できると思い出させてくれる。中学時代の父の急死、高校時代の母の車椅子生活の始まり、ダウン症の弟、塾に通えない経済状況。本人にパニック発作の症状もあり筆者は特別なネアカのタフウーマンというわけでは無さそうなのだけど圧倒的ユーモアと突破力で憂鬱を雲散霧消していく。初めはブログだったからか自由奔放な文章で、洒落の効いた連想ゲームみたいでめちゃくちゃ面白く新鮮。
2024/01/05
徒花
まあまあおもしろい。病気で車椅子生活になった母と、ダウン症の弟と一緒に暮らす著者が日々のことをつづるエッセー。もちろんマジメなところもあるけれど、とにかく著者の繰り出す疾風怒濤の比喩表現と、トンデモ体験談は、笑いどころが満載すぎる。本人の尊敬する人のひとりとして文中にも書かれていたけれど、どことなくさくらももこ先生を思い出すような文体。文章を書くべき人というか、書かないといけない人、という感じがした。
2021/11/09
R
いいエッセー集だった。結構ハードな背景を持った著者だと思うのだけども、そうだからこそバイタリティにあふれて、それを吹っ飛ばしているかのようなステキさが清清しい。基本的に笑い話なんだけども、しんみりいい話が根底に流れているようでとても優しい気持ちで、ふへへと笑える。障害と優しさといった底流を感じるけども、それはそれとして、ホットコーヒーを真夏に売った話と、ブラジャーを新調した体験記は、おなか抱えて笑える内容だった。素晴らしい。
2021/02/15
ネギっ子gen
車椅子の母、ダウン症の弟、ベンチャー起業家で急逝した父――。「100文字で済むことを2000文字で伝える」作家が綴った、心が温かくなる自伝的エッセイ。大好きだった亡父の日記に「誰か、僕の住む街の小説を書いてほしい」とあった。そこで、<トラブルが雨みたいに続々降りかかってくることも。悔しいからそれを面白おかしく考えることも。すぐさま言葉にして書いちゃうことも。ぜんぶ、父からもらった才能だ。わたしのすべては、父との記憶からできている。その父が、書いてほしいと望んでいるのだ。それはもう書くしかないだろう>と。⇒
2021/12/28
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