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千年の愉楽 (小学館文庫 R な- 2-6 中上健次選集 6)

千年の愉楽 (小学館文庫 R な- 2-6 中上健次選集 6)

千年の愉楽 (小学館文庫 R な- 2-6 中上健次選集 6)

作家
中上健次
出版社
小学館
発売日
1999-06-01
ISBN
9784094026160
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千年の愉楽 (小学館文庫 R な- 2-6 中上健次選集 6) / 感想・レビュー

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nina

8年ぶりの再読。初読時に感じた読む者を振り切ってどこまでもうねりながら続いていくような文章のとっつき難さは消え失せ、そこには世界から隔絶された人々の悲しみを沈めた「路地」と、神話に登場する神々のように遊び戯れる中本の一統の美しい男たちの営みが見えるようだった。まるで歳をとり倦み疲れることを恐るかのように死に急ぐ彼らの、そこで流されるその高貴さゆえに澱んだ血や精のほとばしりさえも慈しみ飲み込む「路地」は、もしかしたらすべての男たちの運命を司り彼らの母であり女でもあるオリュウノオバの胎内世界なのかもしれない。

2014/06/02

ますりん

中上健次作品に触れたことのない人に先ずお勧めするなら、で言えば必ずこの作品。オリュウノオバを語り部にして、中本の一統たちの短い生を描いた短編集。ガルシア・マルケスの「エレンディラ」を読んだ時に、中上健次作品との類似性を強く意識しましたが、改めて読みなおして、「ラプラタ奇譚」に出てくる羽の生えた女のところで大きな翼のある年老いた男を思い出し、はたと膝を打つ。実際はマルケスの作品発表のほうが数年早いけど、地球のこちら側とあちら側で呼応しあう才能に勝手に感謝。

2016/10/14

宮永沙織

穢れた高貴な血統を持ち短命な中本一統と、同じく「路地」に住み中本家の男子を取り上げ、千年見守り続けた産婆オリュウノオバ。女に愛される風貌を持ち、刹那的に快楽を求め、堕落しそれでも光に満ちる。素晴らしき紀州サーガ。凄く好きな本です。読まず嫌いはあかんなー。

2014/04/01

wakitasanfujinka

高貴かつ汚穢に満ちた中本の血統に生まれた男衆は、その宿命である夭折を前に閃光する生を放つ。産婆として彼らを取り上げてきたオリュウノオバがその6個の魂を、自身の臨終の際に邂逅するオムニバス形式の短編集。それぞれの話はグロテスクかつビューティフルなのだが、その端々で挿入されるオリュウノオバの死生観が胸に響く。最も幻想的な3話目の「天狗の松」が印象深い。

2011/11/06

Potato

読み始めは一文の長さに閉口しそうになったが、流れるような文体ですぐに神話的な世界に没頭できた。性描写や無法さ、差別などが目につきやすいが、この本は産婆であるオリュウノオバとその夫、毛坊主の礼如という組み合わせによって見えてくる、濃くも短い中本一統の若者達の物語だ。その生を俯瞰することで千年という無限の時間を体得できるのが本書独特の魅力だろう。現実にいたら眉をひそめるような人間模様に高貴な血を感じるのは不思議な体験だった。

2010/08/31

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