家族でも分かり合えない。分かり合えなくても、愛する。西加奈子が描く「偽りのない家族」の物語『さくら』
“僕の手には今、一枚の広告がある。 色の褪せたバナナの、陰鬱な黄色。折りたたみ自転車の、なんだか胡散臭いブルー。そして何かの肉の、その嫌らしい赤と、脂肪の濁った白。” 西加奈子氏による小説『さくら』(小学館)を読みはじめた時、冒頭の表現にガツ…
関連レビュー
“僕の手には今、一枚の広告がある。 色の褪せたバナナの、陰鬱な黄色。折りたたみ自転車の、なんだか胡散臭いブルー。そして何かの肉の、その嫌らしい赤と、脂肪の濁った白。” 西加奈子氏による小説『さくら』(小学館)を読みはじめた時、冒頭の表現にガツ…
西加奈子さんを一躍有名にした出世作『さくら』(西加奈子/小学館)。壊れた家族と愛犬「サクラ」の物語は、今もなお、読み継がれている感動のロングセラーである。 大学生の「僕」は、とある手紙を見ている。「年末、家に帰ります。おとうさん」。この文章…