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舞姫 (新潮文庫)

舞姫 (新潮文庫)

舞姫 (新潮文庫)

作家
川端康成
出版社
新潮社
発売日
1954-11-17
ISBN
9784101001074
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川端康成『舞姫』あらすじ紹介。精神的な不倫と、一家崩壊の物語

『舞姫 (新潮文庫)』(川端康成/新潮社)

 矢木波子と夫の元男との間には21歳の娘と大学生の息子がいる。裕福な育ちで理想家めいたところのある波子は、バレエ教室を営んでいる。かつてはプリマドンナとして舞台での活躍を夢見ていたが、今は娘と生徒の育成に勤しんでいる。対して夫の元男は現実主義的な国文学者で、価値観が合わないことが多い。

 波子は夫に隠れて、結婚前に恋人関係にあった竹原という男としばしば密会している。しかし2人はずっとプラトニックな関係を保っていた。また彼女は夫に体を求められると拒まなかったがそこに心はなく、最近は屈辱を感じるまでになっていた。

 息子の高男はどちらかといえば父のことを尊敬していたが、娘の品子は母の波子のことを慕っていた。彼女も波子からバレエを習い、舞姫を目指していた。

 そんな品子の口から、波子は夫が内緒で貯金をしていることを知らされショックを受ける。元男も波子の浮気に気づいていないわけではなく、財産の確保や息子の留学準備を進めているのであった。夫婦はもはや仮の姿で、そこに本物の家族の信頼やつながりはなかった。

 ある日、波子…

2019/5/12

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舞姫 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

新聞連載と同時進行であろうから、小説内の時間は昭和25年12月から翌年の3月ということになる。小説の末尾に傷痍軍人が登場するなど、戦後の気配が未だ濃厚に漂う。物語の軸を担うのは、今では一線を退いた波子である。彼女は戦前はかなり裕福な家に生まれ、資産を相続していたが、今ではそれらを切り売りしなければならなくなっている。そうしてみると、これは川端版『斜陽』であり、没落の気配が全編を覆う。同時に、この小説では喪失した時間と愛が問われている。それは品子にとっても、夫の矢木にとっても同様に失われた時だったのである。

2017/05/29

新地学@児童書病発動中

『山の音』と対をなす作品だと思う。こちらは女性の視点から、徐々に家庭が崩壊していくのを描いている。動きがなく、重苦しい内容なのだが、川端康成独特の詩的で感覚的な文体に強く惹きつけられた。冒頭の主人公の波子が、思いを寄せている竹原と逢う場面の夕刻の変化していく空の描写などは、日本語の美の極みだと思う。悲しいことだが、ここで描かれているばらばらの家族は、今の日本社会ではありふれている気がする。その意味で、この小説は戦後の家族の在り方を予見した内容を持っている。作家の優れた感受性は時代を超えるのかもしれない。

2016/10/23

ykmmr (^_^)

川端の『舞姫』。舞姫というのはあくまでも、主人公親子の職業と言うことであり、鴎外『舞姫』のようにこれ‼︎感はない。しかし、彼女たちの『夢』を始めとした物語に描かれている内容が、踊り子の美しさとは裏腹に、儚さ・切なさが親子の側を舞っている事も感じさせると思った。そして、川端文学の趣である、背景や調度品にもその姿が目に見える美しさで描かれている。そして最後は散乱となってしまう。私も舞踏家などの知識がない為、勉強になった。島村抱月・松井須磨子・三浦環は知っている。

2021/12/18

優希

寂しい雰囲気の漂う作品でした。過去と未来の舞姫母娘、夫と息子の嫌悪で成り立っているような家族が恐ろしかったです。徐々に崩壊する家庭を描きながらも、動きのない静かさが悲しみを感じさせました。美しく流麗な日本語がひたひたと重い空気を運んでくるようです。現代でも崩壊していく家庭もあり、無気力な悲劇が生み出されているということもあり、何とも言えないリアルさがあるだけでなく、戦後の家庭の暗示がなされてるような気がしてなりませんでした。

2016/11/02

metoo

バレエの演目を華麗に描写した内容では無かった。ここに描かれているのは元プリマドンナ波子と、波子の家庭教師で夫となった矢木と、長男高男、娘品子。波子の踊りのパートナーだった竹原は波子との結婚を選ぶことなく、妻子を得て、長年に渡って波子を見守り支える。未来のプリマドンナ波子の娘品子は、波子の理解者であるが、波子の資産をアテにして生きている父を切り捨てることはできない。あっちで揺られこっちで回され、自分の力で舞えない、悲運の舞姫。

2018/02/04

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