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細雪 (下) (新潮文庫)

細雪 (下) (新潮文庫)

細雪 (下) (新潮文庫)

作家
谷崎潤一郎
出版社
新潮社
発売日
1955-11-01
ISBN
9784101005140
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細雪 (下) (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

終曲は華やかさと寂しさとが渾然とした見事なもの。しかも、華やかさもまた、その背後には一抹の寂しさを隠し持つといった、何重にも織り成された「かさね」のような趣き。これまで一貫して蒔岡家の次女、幸子の視点で語られてきたために、このあたりまで読み進めてくると、読者の視点も彼女に寄り添ってくるようだ。したがって、妙子の行状はさすがに目に余るし、また、雪子には歯がゆい思いを禁じえない。男の読者であってもそうだ。一面、ここに描かれる女たちは、それぞれにしたたかでもある。一方の上方男たちは、なんだか不甲斐ないのだが。

2014/03/29

yoshida

日本文学の記念碑的な傑作である。本作は大東亜戦争の最中である昭和17年から執筆され、敗戦後の昭和23年に完結する。戦中の言論統制にも屈せずに、失われてゆく日本的な美しさ、戦前の日本の日常を伝えている。蒔岡家の三女の雪子が公家を出自とする御牧と、これ以上ない良縁に恵まれながら、四女の妙子はバーテンの三好との子が死産となる。非情なコントラスト。そして雪子が結婚した昭和16年に日本は対米戦争に突入する。この後の蒔岡家はどうなったのか。今は失われた戦前の日本。この作品を読む度に私達は新しい発見をするだろう。傑作。

2016/09/27

黒瀬 木綿希(ゆうき)

昭和16年、戦禍の足音が聞こえてくる中、35歳となった三女・雪子の縁談がとうとう纏まり、ようやく幸子らの肩の荷が下りたと思えば四女・妙子に妊娠の兆候が表れ、二人と蒔岡家の行く末は―という場面で物語は終了。 雪子の最後の様子を見る限りでは、やはり蒔岡の家、何より姉妹たちと離れたくなかったように思えてならない。自由奔放で自分の食い扶持を稼ぐだけの力を持ち、姉や義兄らを散々振り回した妙子も時代が許してくれなかった生き方なのだと思うと遣る瀬無い。本編後の戦争を四姉妹はどのように生き、或いは死んでいったのだろうか。

2019/11/24

雪風のねこ@(=´ω`=)

綺麗で精錬で楚々とした文章は、読んでいると何とも言えない気持ちになる。蛍狩のシーンも幻想的で素晴らしい。その文章で綴られてゆく雪子は、急な文明開化と西欧化の波に揉まれバランスを崩してゆく日本を、重ね合せて描かれている様にも感じた。縁談が纏まってホッとする一方、妙子の有様が対照的過ぎて痛々しい。けれどもそれは自分勝手にし過ぎた罰であり、ある意味慈悲であった様にも感じる。この後、蒔岡家の運命はどうなっていくのであろうか。戦中を生き延びたのなら、御牧の建築設計が大いに活きるのだけれども。祈る他有るまい。

2016/10/03

ゴンゾウ@新潮部

長編大作であったので時間がかかると思ったがあっという間に読んでしまった。これもひとえに谷崎潤一郎の力量によるのだろう。性格も価値観も全く異なる雪子と妙子の生き方を対比させて当時の女性像をうまく表現している。心理描写、情景描写も繊細で映像が目に浮かんでくるようであった。本当に小説絵巻というのにふさわしい傑作でした。

2015/01/04

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