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雁 (新潮文庫)

雁 (新潮文庫)

雁 (新潮文庫)

作家
森鴎外
出版社
新潮社
発売日
2008-02-01
ISBN
9784101020013
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雁 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

50歳前後の執筆だが、女性に心惹かれながら去ってゆくことや、回想記のスタイルをとっていることなど、鷗外の若き日の『舞姫』を想起させる。表題となった雁は、直接的にではないものの、やはりお玉の哀しい宿命といったものを表象するだろうし、そのことは翻って岡田の喪失感(おそらくこれは読者にも共有される)にも繋がるだろう。また、岡田を新しい時代に向けて飛翔してゆくもの、そして一方のお玉をそうした時代の躍動からは取り残されてゆく前時代の感傷と捉えることもできそうだ。「スバル」への連載は明治から大正への過渡期でもあった。

2017/03/17

ykmmr (^_^)

まだ学生をしていてもおかしくない年齢の女性『お玉』が、金銭の為に『妾』という職種につき、『妾』という立場・周囲との落差・そして、通りすがりの学生(岡田)への密かな片思い。若い彼女の色々な『こころ』がある。『妾』の立場の若い彼女と、『本妻』であるお常のお互いへの理解感がまた切ない。この時代はまだ、『妾』的な職業の立場が、沢山いつつも、今よりも立場が低いから、10代でそれにつくなんて、余程のもの好きか訳アリとしか考えられないと思うけどね。岡田への密かな『恋』は、成熟どころか始まりすらせず、

2022/03/07

小梅

この時代の医学生の生活がイメージできました。 なぜタイトルが「雁」?と思いながら読みましたが、そうでしたか…なるほど。

2017/02/03

新地学@児童書病発動中

劇的なプロットではないのだが、深い余韻を残す作品だと思う。父のために高利貸しの妾になったお玉の淡い恋が描かれている。最近立て続けに読んだ夏目漱石との文体の違いを面白く感じた。漱石は話し言葉を土台にして、言葉に勢いがある。鴎外は話し言葉をそのまま使うのではなく、一つ一つの言葉をじっくり考えて使っている感じ。緻密で細部にまで注意を払って書かれた文章だ。結末近くで雁が殺されてしまう場面がある。この場面は、哀しく切ない。雁が象徴しているものを考えると、明治の女性の生きづらさが伝わってきた。

2017/03/13

優希

哀愁漂うくすんだ色合いですし、盛り上がろうとすれば沈む繰り返しなのに情緒を感じずにはいられません。1人の市井の女性の描き方が憂いを漂わせているからでしょう。自分の意志を持たなかったお玉が恋をすることで自我が芽生えていきます。結局結ばれずに終わる恋が切なかったです。すれ違いや儚い恋心を死にゆく雁に例えたのが印象的でした。何ともいえない余韻と情緒を感じる物語です。

2015/09/24

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