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ルポ川崎 (新潮文庫)

ルポ川崎 (新潮文庫)

ルポ川崎 (新潮文庫)

作家
磯部涼
出版社
新潮社
発売日
2021-04-26
ISBN
9784101028415
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「ルポ川崎 (新潮文庫)」のおすすめレビュー

川崎20人殺傷事件など、令和元年に起きた事件の背景を追った『ルポ川崎』著者による骨太なルポルタージュ

本記事には刺激的な表現が含まれます。ご了承の上お読みください。『令和元年のテロリズム』(磯部涼/新潮社)

 ライターの磯部涼氏が2017年に上梓し、第17回新潮ドキュメント賞の候補にもなった『ルポ川崎』(サイゾー)は大変な労作だった。少年犯罪が頻発し、ヘイトスピーチが横行し、治安が悪化の一途を辿っていた川崎市南部の生活に焦点を当て、過酷な生活環境に置かれた人々の日常を写し取った。

 川崎市(特に南部)には未だに深刻な問題が山積しているが、同書では地元仲間で結成されたラップグループ、BAD HOPの成功と活躍が強調されていた。『高校生ラップ選手権』や『フリースタイルダンジョン』といったテレビ番組のバトルで勝ち抜き、日本武道館でライブをやるまでになった彼らの存在は、一筋の光明だったと言える。

〈川崎区で有名になりたきゃ/人殺すかラッパーになるかだ〉(「KAWASAKI DRIFT」)というリリックが示唆するように、『ルポ川崎』は、「成り上がり」を体現した彼らが英雄視されている状況を克明に描出していた。

 だからこそというべきか、磯部氏は、令和元年5月28日に…

2021/6/15

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ルポ川崎 (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

佐島楓

マスコミはあまりにもこの界隈を「ないもの」として扱ってきたように思う。貧困や犯罪、ヘイトデモなどが細々と報じられるようになったのはごく最近だが、かなり以前から存在した「現実」なのだということを、あまりにも見ないようにしてきた。だからといって何ができるのかは、アンダーグラウンドすぎて私にもよくわからない。ただ取材した方々がおっしゃるところの「地獄」は思っていたよりも「普通」に暮らしている人たちの暮らしと紙一重なのかもしれない。

2021/05/22

ナミのママ

中一殺人事件、簡易宿泊所の火災、老人ホーム転落死事件が続いた当時の川崎。事件そのものより背景の暗さがとりただされた街。…10代を川崎で暮らしたが、ここにとりあげられる南部ではなく北部だった。当時、南部には行くな、南武線は利用するな、と言われていた。別世界のような人を多く見かけ、それは大人だけでなく、同年代の10代もだった。この作品を読み、変わってないんじゃないか?というのが素直な感想だ。それは見ないふりをしてきたからか、世代間連鎖なのか。ルポは面白かったが、今の自分には実感がわかない。

2021/05/22

hatayan

2015年に中学生殺害事件の起きた川崎市の臨海工業地帯でひしめき合うように生きる人々をルポ。川崎在住をアイデンティティにラップで身を起こす元不良少年、多文化が共存する社会でヘイトスピーチに立ち向かう在日コリアン、競輪場に通いながらドヤ街で暮らす高齢者など。著者が音楽ライターのためラップやヒップホップに紙幅。東南アジアから出稼ぎで来た女性が日本で苛酷な環境に晒される実態をルポした『じゃぱゆきさん(山谷哲夫著)』の子どもたちのその後を描いているようにも思えました。都市のリアルを生々しく切り取った一冊です。

2021/05/05

雲をみるひと

主にBAD HOPのメンバーの生い立ちや育った環境などがテーマ。当該テーマなので、取り上げられているのがあくまで川崎の一面だとしても題名にさほど違和感はない。しかしながら、この題名にしたことで川崎で発生した事件や川崎出身の他のアーティストも取り上げて、関連付ける方向性の作品になってしまったとしたら少し残念。正直強引な論法に思える箇所も多々ある。

2023/02/26

秋 眉雄

『川崎って罪深い街なんで、聖書がよく合うんですけど、それ以上にラップが合う。ナズや2パックの訳詞を読んだときに、国も世代も違うのに置かれている状況とか考えてることが同じで、しかも、表現がカッコいいことに感動したんです。』町の成り立ち、歴史や立地って現状の背景をダイレクトに映し出しますね。ある意味、正しい「地元若手の有志たちによる地域の特性・特色を活かした町づくり」みたいなものを感じました。

2021/12/14

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