荻窪風土記 (新潮文庫)
荻窪風土記 (新潮文庫) / 感想・レビュー
Aya Murakami
図書館で借りた本。 軍人に対して馬鹿呼ばわりする人間がいたり、居ついた三毛猫が繁殖期になると雄猫たくさん集めて「よりどりみどりニャー」になったり…。やはり井伏鱒二ワールドは明治生まれ離れした面白さがあります。軍人にケンカを売るのは本当に勇気あることだと思います。一歩間違えたら殺されてしまいます。
2018/06/17
やいっち
読み始めの頃、「あちこち懐かしい地名が出てきて、読む手が止まってばかり。どの地名も、彼が在住した頃は村だった。当たり前か。東京って、何処を歩いても、作家などが息づいていた。文化や伝統の厚み。ただ、多くの若い人はそんなことには無頓着。我輩にしたって、東京を離れて、東京を懐かしみ、いろいろ知って、驚く始末」などと書いていた。井伏と太宰らとの関りがあれこれ書いてあって、なかなか興味深い。太宰が懸命に文学(による高名なること)に執心する一方、井伏の(よそ目には)余裕しゃくしゃくたる生き方や人間性が際立つ。
2018/07/27
やまちゃん
風土記..地方の歴史や文物の地誌は土地勘がないのでよく分からなかった。昭和初期から40年頃まで戦争や窮乏など楽ではなかったと思われるが、太宰や小山清ら多彩な文士との付き合いや地の人々との釣りや居酒屋などが楽しく懐かしく語られる。井伏氏の人徳か人が集まってくる。
2018/12/30
筑紫の國造
文豪井伏鱒二による、荻窪在住時代の半世紀に及ぶ自伝的エッセイ。まだ武蔵野の面影残る荻窪の、のどかな情景と文士をはじめとする様々な交流の様子が達意の筆で描かれる。すっかり様変わりした荻窪駅の模様であるが、その急速な変化の前の様子は、貴重な記録になるだろう。もちろん、読み物としても十分面白い事は言うまでもない。全体を通してみると、荻窪や高円寺周辺にもかなりの数の文士たちがいた事がわかる。彼らとは別に、無名の人々と井伏との交流もまた、本書の大きな魅力である。今の荻窪を知る人も、楽しく読めるだろう。
2022/09/27
氷柱
350作目。9月21日から。東京の中心から西に逸れた辺りに馴染みのある人にはおすすめの1作。当時(昭和初期)の作家の交流が描かれていてどことなく「俺TUEEEE」感が出ている。人間関係でどうだから優れている劣っているというのは昔からの話なのだろう。しかし人間関係以外の部分は面白い。具体的に挙げると釣り具屋の辺りが良かった。各駅の前には必ず釣具屋があったという話や、各釣具屋の客数から東京の釣り人の人口を割り出す話などが好み。繰り返すようだが風土記という割には人物描写が多いのが難点。
2017/09/22
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