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ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

ぼくは勉強ができない (新潮文庫)

作家
山田詠美
出版社
新潮社
発売日
1996-03-01
ISBN
9784101036168
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「ぼくは勉強ができない (新潮文庫)」のおすすめレビュー

迷える時代に大人が読みたい、山田詠美による青春小説。17歳のピュアな反抗心が教えてくれること

『ぼくは勉強ができない』(山田詠美/新潮社)

 1991、1992年に文芸誌の「新潮」と「文藝」に短編が9本掲載、1993年に単行本化された山田詠美氏の『ぼくは勉強ができない』(新潮社)。10代の視点から社会を斬るという点で、恋愛小説が多い著者の作品の中では異色だが、山田詠美氏らしいユーモアと人生に対する美意識に満ちた人気作。「自分は何者か?」ということや将来について悩む年代の主人公を通して、混乱の中でも、自分が自分であることを認識して強く生きる方法について考えさせてくれる、大人世代が読むべき小説だ。

 主人公は、学業の成績はよくないが女性にモテる17歳の男子高校生・時田秀美。華やかで恋多き母親と理解ある祖父と暮らす秀美は、父親の顔を知らない。サッカー部に所属し、年上の恋人も気の合う友達もいる。学校で窮屈さを感じることもあるが、「社会から外れないほうがいい」などの一般的な価値観にとらわれず、「自分であること」を大事にする母の影響もあり、秀美は自信を持って我が道を歩く。石鹸の匂いより香水の香りが好きな彼は、清楚な同級生に見とれる大多数のクラスメイトと違…

2023/7/22

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ぼくは勉強ができない (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

山田詠美の教育観がよくわかる。いわば、破格の意味での「高校生の品格」を描いたのだ。ただ、小説としては、秀美の担任の桜井先生が、学校で「久し振りに桃子さんとこ寄ってくか」なんて、いくらなんでもリアリティを欠くんじゃないだろうか。なにしろ「桃子さんとこ」というのはショットバーなのだから。また、秀美の桃子さんに寄せる想いは、あまりにも即物的・性欲的で、恋愛感情の情緒や機微には乏し過ぎるように思う。その点では、むしろ「おまけ」みたいな「番外編・眠れる分度器」の方が、ずっと作品に寄り添えるようだ。

2012/07/12

ちょこまーぶる

秀美くんがどんな大人になるかを考えながら読むと面白い。そして、大人になるってどういうこと?本当の勉強って?と考えさせられる内容で、秀美くんが羨ましくも思える一冊でした。自分の学生時代を振り返ると、何てつまらない平凡な学生だったなぁと回顧してしまった。

2012/03/30

パトラッシュ

感想500冊目。秀美君は学校の成績は悪いが、人生勉強は誰よりも進んでいる。同調圧力なぞ気にしない母親と祖父に鍛えられ、誰より早く酒と女を知り、子供っぽい同級生や自分の考えを押しつけるだけの教師を軽くあしらってしまう。そんな大人に見える彼は女の子に人気が高いが、周囲は却って扱いかねるところが何とも微笑ましい。心身ともに健康な無駄のなさよりも、不健全な精神から生まれる無駄の面白さを知るのが山田流の恋愛教養小説か。旧来の教養小説を笑い飛ばす面白さだが、桃子さんとの関係やダメ教師との争闘をもっと描いてほしかった。

2021/01/03

zero1

山田の文章にはキレがある!キラキラを感じたかったら本書を読むといい。17歳の高校生、秀美は父親がおらず母、祖父と暮らしている。勉強はできないけど年上の桃子という恋人がいる。「○をつけよ」の二択は私も含め、多くの人が陥りやすい。「眠れる分度器」は小五の秀美が転校した際のドタバタが描かれている。「普通とは何か?」というテーマや死んだスズメを食べるかという話は「コンビニ人間」を思い出した。白井教頭が死を教えるため秀美に腕を噛ませる教育は斬新。あとがきで山田は、「大人の方に読んでいただきたい」と述べている。

2019/01/31

さてさて

『複雑な家庭事情の中で育った来た』ことで、独自の価値観が育まれ高校生になった時田の十代の青春が描かれたこの作品。そこには、年上の女性とセックスを繰り返す日々の中に、一方でどこか冷ややかにクラスメイトたちを見る一人の男子高校生の姿が描かれていました。30年も前の作品なのに、思った以上に古臭さを感じさせないこの作品。赤裸々に描写される時田の感情の移り変わりに清洌さを感じさせるこの作品。読者の年齢によって間違いなく読み味が変化するであろう物語の中に、時代を超えても普遍的な青春の眩しさを感じた、そんな作品でした。

2023/05/20

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