花ざかりの森・憂国 (新潮文庫)
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花ざかりの森・憂国 (新潮文庫) / 感想・レビュー
けぴ
16歳で初めて書いた小説『花ざかりの森』をはじめとした自選短編集。『遠乗会』、『橋づくし』など欧米の洒落た雰囲気のあるものから、『卵』、『百万円煎餅』などはちゃけた感じのものまでバラエティー豊か。しかし群を抜く存在感は『憂国』。ニ・ニ六事件をモチーフに軍人夫妻の自決までを色濃く艶やかに描く。三島自身も、「三島のよいところ悪いところすべてを凝縮したような小説」と表現している。この短編のみを読むことでも十分な一冊。
2021/12/22
活字の旅遊人
村田沙耶香のあとは三島由紀夫を読みたくなる。なんでだろう? 表題作の一つである『憂国』は圧倒的な美しさと強さを感じる作品だった。少し前に読んだ『英霊の声』とともに、三島由紀夫の中身の一端を明確に表現していると思う。一方『花ざかりの森』はなんだかこねくりまわした若造の文章という印象で読み返しても馴染めず。『憂国』以外では『遠乗会』『橋づくし』『女方』『詩を書く少年』が好きだな。『卵』『月』は頑張って書いたけど……という本人解説通りの感想をもった。こういう作品もあるんだあ、と驚きつつ。
2022/08/03
セロリ
最初の2編を読んだときは、最後まで読めるか心配になったけどその後の10編は良かった。最後の『月』はそうでもない。『憂国』がイチオシなのだろうが、戦前の切腹文化が嫌いなので、自刃に陶酔する中尉と彼に従う自分に陶酔する妻が、ひどく滑稽に見える。しかし、腹を切るところから死に至るまでの描写はすごい。生々しい。その死に様は、美しくもカッコよくも書かれておらず好感が持てる。美しい死なんてない。わたしは『女方』が一番好きだ。女方の役者に惹かれる男が幻滅を感じると同時に嫉妬している自分を自覚する終わり方がいい。
2022/04/08
こうすけ
三島由紀夫の自選短編集。最初の2作を読んだときは全然のれなくて、もう途中でやめようかと思ったが、全体としてはすごくよかった。当たり外れはありつつ、『百万円煎餅』はこれまで読んだあらゆる短編小説のなかでベストかもしれない。でも、他にも良作がたくさん。これまで、いろいろ読んでみてもどうにもハマれなかった三島だが、やっと好きになれたかも。
2023/03/23
逢沢伊月
おすすめ度:★★★★ ジャンル:短めで耽美な純文学 こんな人におすすめ: 短編で三島由紀夫の美しい文体を手っ取り早く読みたい人 三島由紀夫の作品は美しい文体が特徴と評される事が多いが、ほんと日本語って美しいなと思わされる。
2024/04/15
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