KADOKAWA Group

Facebook Twitter LINE はてブ Instagram Pinterest

午後の曳航 (新潮文庫)

午後の曳航 (新潮文庫)

午後の曳航 (新潮文庫)

作家
三島由紀夫
出版社
新潮社
発売日
2020-10-28
ISBN
9784101050461
amazonで購入する

午後の曳航 (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

けぴ

新版なので文字が大きく読みやすい。父を亡くし母と二人暮らしの登は中学生。船乗りの竜二と良い仲になる母。二人の夜の生活を隙間から覗きこむ登。谷崎潤一郎っぽい変態さを感じながら物語は進行。やがて竜二と再婚を決意する母。ある時、夜の生活を登が覗いていることに気付く。母と竜二に叱られる登。罰を与えるとして登と中学生の仲間は竜二を誘い出し、毒入り紅茶を飲ませるところで幕が閉じられる。中編ながら読み応えあるストーリーでした!

2021/05/30

NICKNAME

思ったより短く他の作品群と比べ内容的にも薄く感じられる作品であった。想像していたエンディングと全く違い何だかあっけない終わり方である。ただその締め括りの最後の一文が三島作品で奔馬の最後を彷彿させる。結局強く引き込まれないまま、短い作品であるのに結構ダラダラ読んでしまった。三島にもこういう作品があるというのがある意味新鮮ではある。

2022/03/04

しんすけ

三島由紀夫最晩年の作品と云って良い。 この後に白鳥の歌として『豊饒の海』シリーズを残すが、『午後の曳航』ほどの香ばしさは失せていた。 十三歳の登という少年は主役のようだが、狂言回しにしか観えないことが時折ある。この少年が覗き見る母の姿が艶めかしいからだろう。 本書の初読時、ぼくは十七歳だったはず。その時は登の母の美しさを創造し、その創造に陶酔しながら読んでいた。 そしてぼくの耳もとで、ひばりの「港町十三番地」が聞こえていたような気もする。

2022/04/21

hoiminsakura

妥協のない張り詰めた緊張の中に生き完璧な未来を望む少年は、海を愛し船に憧れ一人の航海士に英雄をみた。母とふたりで輝くような船出を見送ったが、航海から戻った船員に対する感情が変化しやがて……。軽い気持ちで読み始めたが中身はむしろ金閣寺に近いものがあり、最後はドキドキした。余韻を残す終わり方は各人の想像に任される。恐らく犯罪は成されるのであろう。

2022/09/06

しおり

都会の、早熟した、賢い少年達。危なっかしい組み合わせだと思う。守られていて活力と時間はあるけど責任はない頃だったら大人たちが平穏な日常に収斂していく様に怒りを感じるかもしれない。竜二は船乗りで、陸の生活を疎んでいた。自分専用の人生が、海の生涯があると信じていた。登にとって彼が大人の堕落から離れた存在に見えたのも無理はない。でもやっぱ、歳を取ると角は摩耗して丸くなってしまう。竜二が女性と出会い、急速に陸に染まっていくのは残念だけど強い納得感がある。命に対するシニシズムなくして冷たい心の海は維持できないのかも

2023/05/28

感想・レビューをもっと見る