音楽 (新潮文庫)
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音楽 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ぼむ☆
三島の書く音楽の小説とはどんなものだろうという興味からこの本を選んだが、それはミュージックにあらず。『女性のエクスタシー』の比喩だったのだ。音楽が聴こえない(不感症の)麗子を診察する精神分析医の手記の形をとった小説である。麗子に巣食う原因を探っていく過程はあたかも推理小説のようであり、そして最後にはしっかり解決される様は娯楽作品としても大いに楽しめた。また主人公の心理分析が非常に巧妙であり三島が作家であることを疑ってしまう。性的テーマを扱った内容ではあるがいやらしさはなく、また文体の素晴らしさは三島だ。
2022/02/28
銀の鈴
澁澤龍彦の解説の文章が意外にもすこぶる読みやすくいことが印象的。本作品は三島由紀夫の中でも少し独特なカテゴリもしれませんね。
2023/04/07
ふくしんづけ
「音楽」という、触れざる他人の性への、慎ましやかなアプローチがまた、いいのである。これを思うと、いかに傲慢に、頭の中であけすけに、人間の性を玩具に、偶像ですよと言い訳して、人形ごっこに興じるの多いことか、と思わざるを得ない。それから、「分析室」という場。このふたつがこの作品において、すごく、効いているのである。主人公の汐見は終盤まで、この部屋をでることがない。代わりに、医師の元には麗子からの手紙が届き、読者はそこから外の世界へでることができる。この舞台設定のコントロールぶりが凄まじい。
2022/05/13
asuwanna
面白かった…!三島作品には珍しく平易な文体で、頭脳の平凡な読者である自分にもとても読みやすく最後まで一気に読めました。難しい比喩表現が連続しているような作品だと、理解できなくて頭が混乱して読み疲れる&自分の頭の出来の悪さに自己嫌悪に陥ることが多々あるのですが、この作品に限ってはそれが皆無だったので、自己肯定感を保持できて満足できる読書体験でした。金閣寺、仮面の告白、短編集と来て、少し疲れてこの作品で頭をほぐした後は、再びガチな作品に戻ろうか。
2023/11/02
賢一
『音楽』をオルガスムの比喩として題する三島のネーミングセンスに感服した。麗子にとって既に音楽を聴いた所謂"試聴済みの男"は形骸に過ぎず、まるで使い捨ての充電器のように関わった男が用済みになると次の音楽を聴くべく男を捨てる。己の快楽の成就のために他人を地獄に突き落とす事が出来る人間を精神分析のレポート形式で巧みに露見させている。人間心理の不条理さや近親相姦など何度蒸し返したって良いと思わせる物語ではないか?一見美しく解決したかに思えてそうではないようにもとれる終わり方だ。性の世界に万人向きの幸福は無い。
2022/12/13
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