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野火(のび) (新潮文庫)

野火(のび) (新潮文庫)

野火(のび) (新潮文庫)

作家
大岡昇平
出版社
新潮社
発売日
1954-05-04
ISBN
9784101065038
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野火(のび) (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

凄まじいばかりの読書体験だった。時は第2次大戦の末期。小説の舞台はレイテ島。大岡昇平自身の体験に基づいているのだろうが、どこまでが直接的体験で、どこからがフィクションであるのかはわからない。もっとも、フィクションであったとしても、レイテやニューギニアで行われた日本の敗残兵による人肉食は事実であっただろう。大岡はこれを狂人の手記という形で小説化しているが、あのいわば極限状態の中にあって、自らを内省する自己をそこに常に対置していた。小説としての成功はそこにあると思われる。そして、彼はあの光景を確かに見たのだ。

2020/06/05

教科書に掲載された作品だったか、課題図書だったか、学生時代に触れたことがあるらしいが記憶に無く…。今なら理解出来ますが、レイテ戦の話は学生時代の私には難しいと思います。まずレイテ戦を習ったっけ!?から始まるし、当時の思想も、学生だったために…。実際に過酷な戦場で命がけの闘いに参戦された方の作品はとてもリアルです。

2012/10/20

ehirano1

人間としてというよりも生物としての「生存」に係る内在的論理がドストレートに描かれた作品だと思いました。条件さえ整えば容易に現れ、ヒトを獣と化す生存に係る内在的論理は案外心層の浅い所にあるんじゃないかと思いました。

2023/08/06

こーた

小説を読みおえて、著者略歴を見る。大岡昇平が戦争へ駆り出された年齢を、計算してみる。三十五歳。小説の主人公田村も、それほどの年齢と考えて差し支えないだろう。いまのぼくは、彼らとほとんど同い年である。この偶然の一致が何よりも衝撃だった。ぼくは男の子だから、もし国が戦争をはじめたら、いずれは兵隊に取られるのだな。そうなったら、イヤだな、怖いな。子どものころから、ずっとそうおもっていた。戦争に対する率直な嫌悪感は、ぼくの場合、この単純な恐怖心に根ざしているといっていい。兵士の思考は飢えて揺らぎ、殺人を、⇒

2018/08/11

抹茶モナカ

戦時中のフィリピン島での負傷兵の物語。強い飢餓から、周囲の兵隊が人の肉を食べる中、進んでは食べなかった男の内面を描く。思考実験のようなものが試みられているのか、内面がカッチリ描かれていた。読了後、夕食に鶏肉を食べたのだけど、変に意識してしまって、鶏肉を食べるのも変な感じになってしまった。短い小説だけれど、濃密で、文体もギリギリ鮮度が残っていて古臭くなる手前のような。

2015/10/26

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