花のいのち (新潮文庫 た 15-7)
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花のいのち (新潮文庫 た 15-7) / 感想・レビュー
ミカママ
最初にぶった斬ると、まぁ古臭い(笑)「あらいやだ、わたくしとしたことが」的な。昭和40年代の女性はかくも男を立てたのか(昨日まで読んでいた作品を未だ引き摺っている)。惚れた男と同衾したからといって、翌朝の女が見違えるほど美しくなる、とか男性の願望でしか有り得ないと思うのだが。いずれにしても女が「吉祥天のような美貌」だから成り立った世界。いろいろ書いたが、立原作品はン十年振り、久しぶりに楽しい読書体験だった。
2021/08/09
新地学@児童書病発動中
切なさと儚さが胸に沁みる恋愛小説の傑作。主人公のよう子はふとしたきっかけから夫の不貞を知り、離婚を決意して一人で暮らし始める。沼津の別荘で暮らしている時にそこに来た織部と出会って、恋に落ちるのだが……。この作者は文章が美しい。情景描写と心理描写が一つに溶け合って、日本的な美を感じる小説の世界が作りだされる。この小説は鎌倉と奈良が舞台になっており、二つの都市の草花や仏像などが端正な筆で描かれていた。結末でよう子を待ち受けている運命は残酷だ。(続きます)
2018/08/05
遥かなる想い
ゆっくり落ち着いた大人の 恋愛小説。あまりにヒロインが優しく・聡明で 淡々と落ち着いて読める。刺激的な恋愛小説がお好きな方はきっと 退屈 なさると思う。ちょっと精神的に落ち込んでいる時に読むとなごむ本である。
2010/05/17
メタボン
☆☆☆☆ この作家にはやはり古都と日本の文化(本作では寺院や仏像。以前読んだ残りの雪では焼物。)が似つかわしい。美しい日本を味わった。窈子と織部が結ばれてからの物語が性急すぎるように感じた。生き急ぐとでも言うべきか。読友のコメントにもあったが、もう少し長い作品となっていれば、このあたりの感情移入が深まったか。でもこのあっけなさが恋愛の果かなさを印象付けているのかも。織部の先妻の妹泰子の「二人は幸福になれない」という言葉は、まさしく言霊というか呪いのように作用した。
2021/10/17
じいじ
何とも哀しい読後感だが、甘美な余韻が残るいい小説だった。男女の哀歓、心情の移り変わりを、これまで美しく描き上げる立原正秋を、私はこの一作で好きになった。子供を残し離婚した窈子27歳と病の妻に先立たれた美術史家40歳との静かに、内面は激しく燃える大人の恋。哀しい結末だったが、悲恋を乗り越え、未来に向けた直向きな女の「生」への決意が感じ取れた。男の読み手には理想の女像が、女の読み手には理想の男像を観ることができるのではないだろうか。古都奈良と鎌倉の寺をゆっくりと歩いてみたくなった。いい小説です。
2014/11/11
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511