残りの雪 (新潮文庫)
残りの雪 (新潮文庫) / 感想・レビュー
ミカママ
昭和の時代に読んだ立原作品。これもおそらく再読。立原作品と言えば、着物の似合う美人と鎌倉。両者をまんまど真ん中に持ってきた今作。当時は「このしっとり感がたまらん」とか思っていたが、読み返すとその古臭さと、女性をアクセにしか見ていない男どもが鼻につく。幼な子置き去りの逢瀬もありえない。初出を見て納得、昭和40年代の日経か。偏見を承知で言えば、通勤電車内で日経を読む女性は限られていただろうから、やはり中高年男性へのお伽話(ハーレクイン)だな。官能度高め、下手するとナベジュンの上言ってるんじゃ(笑)
2024/04/17
じいじ
昭和の匂い漂う、おとなの悲恋小説を存分に堪能した。夫が会社後輩の女と失踪で幕開き。残された妻・里子(主人公)と消えた夫の切なく侘しく愛おしい一年が、美しい文章で綴られています。里子と44歳・会社社長の一途な恋が深みにはまっていくのが本筋。閑寂な鎌倉を舞台に、二人は激しく燃え上がります。逢瀬の官能的描写は、オブラートに包んで女の心想を感知させる文章の巧さが光ります。不倫の恋で、人を愛することの辛さを描いていますが、私はこの主人公を理解します。恋の結末は…?! 立原正秋の恋愛小説をもっと読みたくなりました。
2018/05/26
新地学@児童書病発動中
切なく美しい恋愛小説。主人公の里子と年上の男性坂西の恋を描いている。里子は夫が失踪した失意の日々の中で坂西に出会い、強く惹かれていく。立原正秋は天性のストーリーテラーだ。二人の恋の行方が気になって、読者は先へ先へと読んでしまう。それから性愛の描写が美しい。美しすぎて気恥ずかしくなることもあったが、このロマンチックな描写に惹きつけられる人は多いだろう。性愛を美しく描くと言う日本文学の伝統を作者が尊重していることが分かる。一つだけ残念なのは、恋愛が男性上位で書かれていることで、(続きます)
2018/08/23
遥かなる想い
立原正秋文学の変質とでも言うべきか?『剣ヶ崎・白い罌粟』『冬の旅』等の硬質な叙情性が影をひそめ、大人のゆるやかな恋愛小説になっている。物語は夫に突然失踪された女性が苦しみ、あきらめ、そして出会うところから 始まる。物語全体の心理描写がやや浅く、もの足りない部分もあるが、大人の恋には多くの説明がいらないのだろう。ただ、この物語に登場する里子というヒロインのいさぎよさには心救われる思いが する心の芯が強いせいか、かえって表面に出る浮かび上がってくる…そんな印象だった。
2010/05/17
メタボン
☆☆☆☆ ドロドロの男女関係なんだけど、不思議とそれがいやらしく感じられないのは、やはり立原の筆力のせいなのだろう。鎌倉や伊豆、湯沢の季節、風物の移り変わりの描写が素晴らしく、日本語の小説を読む醍醐味に溢れている。里子と坂西、千枝と工藤、このカップルの対照も効果的。女としてどんどん高まっていく里子と、どんどん落ちていく工藤。1年を経て嫪たけた妻里子を見て愕然とする工藤が物悲しい。そしてそんな工藤を母性愛で包み込む千枝もまた良い女。現実的ではないが、大人の恋愛(不倫)小説を堪能した。
2021/10/01
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- 出版社
- 左右社
- 発売日
- 2019-11-01
- ISBN
- 9784865282511