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愛の試み (新潮文庫)

愛の試み (新潮文庫)

愛の試み (新潮文庫)

作家
福永武彦
出版社
新潮社
発売日
1975-05-28
ISBN
9784101115061
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「愛の試み (新潮文庫)」の関連記事

恋愛をやめたら退屈で窮屈。身近な世界を広げてくれた、小さいコトの話【読書日記16冊目】

2020年1月某日

 年が明けて春の匂いが感じられるようになり、どん底の体調がほんの少し上向いてきたとき、私はあぁ退屈だなぁと思った。

 退屈でなかった頃はどうやって過ごしていたかというと、好きな男の人のことばかり考えていた。言い換えると今は、体調不良などのいろいろな事情で、恋愛というか人を好きになることから努めて距離を置いている。

 こんなことを言うのは恥ずかしいことだとわかっているけれど、ほんの数カ月前まで、私は本当の意味で自分のことを考えられていなかった。脳内のリソースをそこに割いていなかったと言ってもいい。生まれてからずっとそう。好きな男の人のことの前は、母のことばかりが頭にあった。そんな私は、常に母や好きな男の人を参照しながらでしか物事を考えられなかった。それがすなわち相手のためになっているかはまた別の話だし、ましてや彼らを責めたりする気持ちなんて更々ない。ただ、いずれにせよ余白がなかった。だから、退屈を感じることもなかった。

 すべての時間を自分のために使えるようになって、なんて自由なんだと思った。肩の荷が下りて解放されたような気分だった。…

2020/1/27

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愛の試み (新潮文庫) / 感想・レビュー

powerd by 読書メーター

mayu

HOBO選書。まず絶対的なものとして、人は孤独を抱えている。愛は、その孤独を靭くするためにあるものだという。孤独は、望んだ愛を得ることができなかった時に陥り、避けたいものだと思っていた私は、この考え方に感銘を受けた。失った愛の苦しみも、孤独を、ひいては自己を充実させるために必要な時間だと思えば、前を向ける。愛の試みとは、全ての人が抱える根源的な孤独と向き合う試みなのだ。挿話を挟みながら進んでいく、愛と孤独についての思索。短いながらも読み応えがあった。

2024/03/22

Gotoran

「愛と孤独について」というテーマの恋愛小説を良く目にする福永作品。本書は、同じテーマでの福永的恋愛論となっている。愛につきもののエゴ、嫉妬、憐憫、自己犠牲、愛と理解の違い、愛することと愛されることの隔たり、愛の限界などについて語りながら、恋愛と孤独が相補的に説かれている、また9編の掌編小説が要所要所に散りばめられてもいる。著者が「愛と孤独について」思索を巡らした軌跡を辿ることができた。読み応え十分だった。

2022/09/18

佐島楓

誰でも(かどうかは厳密にいうとわからないが)一時は苦しんだことのある愛のかたち。こんなにあっさりと一般化というか文章化できるものなのか・・・と敗北感に近い感覚を味わった。何度でも愛に身を投じることをいとわない人間は、存在そのものが不可解で、また、いとおしくもある。

2015/01/19

わっぱっぱ

「ワッパはごちゃごちゃ考え過ぎ。もっと自分の感覚を大切にしろ。」と度々言われるにも関わらず、こういう(観念的な)本に手が伸びてしまう私。愛に正解もマニュアルもないってことはわかってるのだけど。この苦しさを肯定してくれる何かを探してしまうのだ。「愛」以上に「孤独」という言葉が多く出てくる本書は、若者が指標とするには些か苦すぎるかもしれないがおよそ本源であろう。愛は自己の孤独を映す鏡であり、孤独を埋めるものではないと、不惑を過ぎたいま得心している。試みるとは己を賭すこと。恥ずべきは失敗でなくそれを畏れること。

2017/06/08

km

愛されることよりも愛することが大切。そんなことは分かってるつもりでも、さみしさとか苦しさを無視して相手を愛するのは精神的に体力がいると思う。受け身の恋愛ではなくて、愛することをする恋愛じゃなければ、いつまでも孤独と恋愛に恐れる人生になる。勇気のいる一歩を踏み出して、傷付くかもしれない危険地帯に足を踏み入れなければ、真に愛し愛されることにはならない。愛することが出来るようになれば、愛と孤独は人生を豊かにする要素になる。言ってることはよく分かるんだけど、それを本当に実践するのは難しい。

2017/07/27

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