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笑う月 (新潮文庫)

笑う月 (新潮文庫)

笑う月 (新潮文庫)

作家
安部公房
出版社
新潮社
発売日
0000-00-00
ISBN
9784101121185
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笑う月 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

Wikipediaでは随筆に分類されているが、本編はまぎれもなく小説だ。中には例えば「発想の種子」のように、それ単体ではエッセイと呼ぶ方が相応しそうなものもあるが、全体としては、意識的に再構成された小説である。冒頭に置かれた「睡眠誘導装置」による入眠から始まって、一旦は覚醒したかのように見せながら、最後の「密会」では、より深い眠りの中に入っていくのだ。ただし、最後の数篇を除いては、その夢が驚くほど理性的で論理的な構造の中に置かれている。安倍公房らしさがより鮮明に表れているのは果たしてどちらだろうか。

2014/01/13

めでゅう

『笑う月』。語り手の〈夢〉についての捉え方に共感する。「つまり肝心なのは、笑う月の身元や正体などではなく、笑う月そのものなのである」。夢は、その夢のままに。/『鞄』。嫌になるほどの自由、というのも悪くないだろうなと思う。「自由」という言葉には、「正義」や「大人」といった言葉たちと同じタイプの〈意味の氾濫〉が起きている。ここで扱うのは、作中の鞄を持った人間が感覚するあの自由だ。何をためらうこともなく、ただ鞄に導かれて歩き続ける、ありとあらゆる不安が排除されたあの自由。しかし鞄を手放すことはいつだってできる。

2018/05/23

ケイ

「睡眠誘導術」夢とうつつの境目はどこか。それがゾッとする。「藤野くんのこと」スミからスミまで面白かった。特にアムダの話。あれだけで傑作なネタだと思う。「蓄音機」残酷なんだけれど、大家族とはこんなものだったのだろうか。蓄音機を抱えたおじいさんは逞しく切ない。「ワラゲン考」悪意が容赦なく、それゆえの面白さ。「シャボン玉の皮」とてつもなく胸が苦しい。箱男は未読だが、その写真のテーマが恐ろしくせつない。後半の短編は、読むに堪えられない文章が多かった。夏の夜向きの短編集。

2016/07/24

ちなぽむ@気まぐれ

月が笑うと貴方が言ったからみあげると満天の星だった/冷たく澄んだ紫に吐く息白くたなびく/笑う月は吉兆かと貴方の手をぎゅっと握ると/手だったものはぐずぐずに崩れてしまった/私が握っていたものは林檎だった/それは罪の果実/裸でふれあうことが自然な世界で方舟に乗りたいと私は言った/貴方がほほ笑んで先に乗せるから/当然ふたりはずっと一緒だと思っていた/波は貴方を運んでしまった/私は貴方を探す舟を漕ぎ出し/少しづつ沈んで/息はなくなって/いつか会えると/ずっと会えなかったのかと/覚めやらずつめたい

2020/12/02

ばりぼー

安部公房氏の作品の原案とも言える夢のスケッチ集。「夢はやはり夢として、下手な解釈は加えず、ありのままに受け取るべきなのだろう」という言葉通り、大半は本を閉じた瞬間に忘れてしまいますけど(笑)。ただ、なかには鋭い寓意性を有しているものもあり、全く侮れません。特に「公然の秘密」は、某社の「日本文学100年の名作」にも選ばれている秀作で、芸能界にはびこる薬物疑惑だとか、スボーツ界のドーピング、八百長疑惑だとか、読者の想像力を刺激するあんなことやこんなことが次々と思い浮かび、かなり強烈なインパクトを残します。

2015/10/24

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