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海と毒薬 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)

海と毒薬 (新潮文庫)

作家
遠藤周作
出版社
新潮社
発売日
1960-07-15
ISBN
9784101123028
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ジャンル

海と毒薬 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

これまでに読んだ遠藤周作の小説との決定的な違いは、神と人間の問題が正面きって問われないことだ。篇中ではヒルダが「神さまがこわくないのですか。あなたは神さまの罰を信じないのですか」というたった1箇所に見られるだけだ。すなわち、あえて神なき世界での人間を描いたのがこの作品である。「神なき世界で人間は裁かれることはないのか」との問いの前にさらされた時、登場人物たちはそれぞれの思念を持ち、それぞれに身を処していくのだが、そこには行きつく先がないのである。読後に、読者もまた空虚感に捉われるのはその故にほかならない。

2015/02/20

どんよりする話でした。登場人物の中で勝呂さんの人間的な感情がある部分が、唯一の救いのように思えるぐらいでした。いずれは死んでしまうのだからと患者の体を使い人体実験の手術をする。何も知らない患者がかわいそうとか酷いとかだけの、簡単なストーリーではなかったです。

2014/10/27

遥かなる想い

アメリカ人捕虜の人体実験という事件を題材に 医学に携わる人々の倫理・モラルを描いた作品。どうして手術参加を断れなかったのか、そして犯してしまった罪の意識…テーマは暗く不気味だが、遠藤周作の筆力が読みやすい本に変えてくれている。

青乃108号

最初に登場した名も無い男、彼が気胸をうって貰う医師の勝呂。この男こそ先の大戦中、捕虜の生体を使って人体実験をした人物だというのだがー。そして時代は戦時中、勝呂、同僚の戸田、看護師の上田のそれぞれの過去を描きながら、クライマックスで彼等が集められ、これからまさに行われんとす人体実験の舞台を冷たく突き放した視点で描く遠藤。勝呂は手出しをせず傍観に徹するが、激しく良心の呵責にさいなまれる。戦争と結核で人が簡単に死んでしまう時代があったという事実。結核はともかく、戦争は、近い将来現実のものとなるかも知れないのだ。

2022/08/21

33 kouch

罰は恐れながら罪を恐れない日本人の習性はどこに由来しているか。異常な状況における異常な行動を生体解剖を題材にして取り上げている。勝呂以外の実行者達が意外にも冷静なのが怖い。裁かれることは嫌がるが、「…仕方がない、皆あの状況ならそうするよ」という開き直りが心を支えている。そこには人命に役に立つことをした誇りさえ感じる。人類のために人を殺める矛盾。「夜と霧」の異常性にも通ずる人間の恐ろしさを感じる。自分がその場にいたらどうしたのだろうか。勝呂のように立ちすくむ勇気はあったのだろうか…

2023/09/18

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