影に対して (新潮文庫)
影に対して (新潮文庫) / 感想・レビュー
優希
周作先生の父、母への想いが伝わってくるようでした。その軸にはやはりキリストへの想いがあるのでしょう。
2023/06/27
優希
再読です。6編からなる短編集です。どの短編も「母」がキーワードになっているように思います。それは周作先生の髪への想いでもあり、母がいなかったらクリスチャンになることもなかったでしょう。周作先生の原点と言っても良いと思います。
2023/11/23
活字の旅遊人
全6作の短編集。サブタイトルの通り、母の話題で統一されている。最後『還りなん』以外は似た背景設定。大連の暮らし、両親の不和、母子家庭生活、洗礼、その後に再婚した父との暮らし。それぞれに含まれる寂しさとそこから生まれざるを得ない諦めと強さ。母を追う精神は、神が応えてくれないというあのテーマと同じなのかなあと感じた。母が芸術を追求して子どもを見ない(と子どもに感じさせてしまう)という件だが、現代では芸術のような分野に限らず「仕事」でそれをやってるケースが増えているだろう。「仕事」が「スマホ」になってるかも?
2023/11/04
ホシ
苛烈なまでに「本当の人生」を生きる母が描かれた6作品。もちろん、これら作品のモチーフは遠藤の母・郁。作品からは遠藤の複雑な、というよりは屈折的な母への愛が窺えます。「あたたかさ」といった言葉とは対称的な母の姿に少年・遠藤周作のみならず周りの親族らも困惑します。しかしそれでも、遠藤の胸には母が、いわゆる「母」として大きく存在し、周りの人々が母を蔑むことに抵抗します。江藤淳氏は『沈黙』に示されたイエスは母であると評じたそうですが、私は本作を読んで遠藤はイエスに彼自身を重ねたのではないかという思いを持ちました。
2023/07/30
きょん
強く、烈しい母。それゆえに父や周りと衝突し、離婚後もうまくいかないまま、亡くなった。その母の烈しさやひたむきさに圧倒されながらも、思いを募らせる息子。これが遠藤周作のいちばん大きな、作家としてのテーマだったのだ。その思いがしたたるような作品たちだった。
2023/04/08
感想・レビューをもっと見る