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個人的な体験 (新潮文庫)

個人的な体験 (新潮文庫)

個人的な体験 (新潮文庫)

作家
大江健三郎
出版社
新潮社
発売日
1981-02-27
ISBN
9784101126104
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ジャンル

個人的な体験 (新潮文庫) / 感想・レビュー

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遥かなる想い

大江健三郎がわが子への思いを込めて書いた魂の作品。絶望感のようなものと、再生への希望のようなものが根底に流れているような気がしていた。

2010/06/19

ヴェネツィア

再読。鳥(バード)の苦闘―もっとも、それはひたすらな逃亡(赤ん坊からの、そして自己からの)に過ぎなかったのだが。大江自身にとってのイニシエーションは、まさしくこの作品を「書く」ことによってしかなされなかったのだろう。それは、文字通りに「個人的な体験」だったのであり、また大江の作品史の上でも、重要な転換点となった小説。

2012/04/06

厩戸皇子そっくりおじさん・寺

「いつか読みたい」と口では言いながら、我ながら読む素振りも見せない作家というのが私には居る。その中の一人が大江健三郎だった。小谷野敦の『江藤淳と大江健三郎』は興味深く読んでいるのに。しかしこの度、畏友から本書を頂き、ようやく初大江健三郎に至った。まずこの表紙の絵が気に入った。この絵が物語を強く反映したものだと読書中に解らされる事になる。本書を読む寸前まで、回顧や日常茶飯事を扱った私小説ばかり読んでいたせいか、大江健三郎の翻訳の様な文章は読み辛いものに感じ、上手く組み合ってくるまで時間が要った。(つづく)

2019/09/27

アナーキー靴下

やはり大江健三郎は難しく、重い。難しいと感じるのは、鳥という一人の人間そのものであり、本人にしか理解し得ないものと思うからだろう。主人公と接触する人間、その接地面までが自己の一部として拡張されているようで、度の合わない眼鏡で周囲を見続けている感覚である。接地面として最も比重が高い存在が赤んぼうであり、重力を持った現実そのものに縛り付けられる重苦しさ。度々酸っぱさや吐き気が表現されるが、押し寄せてくる現実に対しての反応か。欺瞞から、欺瞞へと、逃れようとした時点で、引き受けることを予期していたようでもある。

2021/03/12

かみぶくろ

3.9/5.0 脳に障害を持って生まれてきた赤ん坊からの精神的逃避劇。衰弱死を企てたり愛人宅に逃げ込んだりと、卑しく葛藤しまくる主人公が人間臭くて良い。賛否あるラストの展開はたしかに物語的には突飛に感じたが、大江健三郎自身にとっての、息子との共生への希望の表現なのであれば、全面的に肯定したくなる感動のラストへと変わる。

2023/01/23

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