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「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち (新潮文庫)

「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち (新潮文庫)

「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち (新潮文庫)

作家
大江健三郎
出版社
新潮社
発売日
1986-02-27
ISBN
9784101126159
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「雨の木(レイン・ツリー)」を聴く女たち (新潮文庫) / 感想・レビュー

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ヴェネツィア

「雨の木」を共通のメタファーとして書かれた5つの連作短編集。全体として長編小説「雨の木を聴く女たち」を構成していると言えなくもないが、最後の「泳ぐ男」は他とは異質な感が否めない。5つの小説は時系列に並べられ、この時期(1982年)の大江自身の行動や体験と概ねは重なるのだが、アクチュアルなものとフィクショナルなものが、意識的に混淆される小説作方をとっている。したがって、読者の中にこの一連の物語を大江の私小説として読むかもしれない。そして、おそらく大江はそのことも重々承知した上で小説を仮構しているのだろう。

2013/02/19

遥かなる想い

ある意味、大江健三郎らしい作品。「雨の木」のイメージを全編に意識させながら、描いているが、ストーリー的には、やはりよくわからなかった。 「読売文学賞受賞」の名作らしいのだが。

2010/06/19

Vakira

文庫カバー裏の解説には「『雨の木』のイメージは荒涼たる人間世界への再生合図である。」とある。メタファー(暗喩)として「雨の木」を表現するのであれば、そのメタファーの元が存在するはずだ。「雨の木」とは何か?夜中に雨が降ると翌日、普通の木はすぐ乾いてしまうのにこの木は葉に水滴をため込んで翌日まで雨を降らす。タイミングをずらして恵みの雨を継続する木。しかし雨とは生命維持に必要なものだが、全てを濡らす、生活には些か厄介なものになったりする。時間差の恵みと時間差の厄介事。過去の事実と時間差で出現するの現在の厄介。

2019/03/24

Gotoran

宇宙の木でもあれば、現実の木でもある「雨の木」をメタファーとして書かれた5編の連作短編集。小説家の中年男が語り手の私小説的な叙述が垣間見られる。人の死とその後に残された者たちの悲嘆が描かれている。高安カッチャンとその妻ペニー、カルロス、猪之口さんなど、個性的な登場人物たちと語り手「僕」との関係が独特で、印象に残った。

2023/04/17

メタボン

☆☆☆☆★ これも一つの転換点となったのであろうかと思われる短編集。レインツリーから喚起されるイメージを辿るような前半4つの短篇。高安カッチャンはそれまでの大江作品に出てくる不器用で破滅的な男の典型と思われる。その妻となるペニーからの追求が印象的。そしてそれら4編を一度追いやって新たに構築された「泳ぐ男」。「泳ぐ男」に大江が初期から書いてきた暴力的な性、そしてそれに殉ずるような女性(ここでは猪ノ口さん)のテーマが現れている。精神の内側を性的な側面からグロテスクに照らすような衝撃的な作品だった。

2021/02/05

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